イノベーター理論とは?商品・サービス拡大に必要な戦略と使い方

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新しい商品・サービスが普及するかどうか

2017年の総務省の統計によると、日本人のインターネット利用率は80.9%となっており、12歳以上60歳未満に限ると92.4%-98.7%と高い数字を示しています。つまり、10代から50代はほぼすべての人が何らかの端末を通して、WEBに触れているということです。

個人のインターネット利用者の割合の推移

総務省|平成30年版 情報通信白書|インターネット利用の広がり

一方、10-20代を中心に爆発的に広がったインスタグラムは、2018年9月時点の月間アクティブアカウント数が2900万を突破しました。仮に日本のインターネット利用者が1億人とした場合、インスタグラム月間利用率は29%ということになります。

Instagramの国内月間アクティブアカウント数が2900万を突破、国内のストーリーズ利用に関するデータも発表 | Facebookニュースルーム

では、今後インスタグラムは、さらにユーザーを増やすことができるのでしょうか。

世の中に登場したばかりのハイテク商品やハイテクサービスが市場に受け入れられ、普及する様子を説明する理論を「普及学」と言い、普及の様子をグラフ化し、5段階に分類した考え方を「イノベーター理論」と言います。

イノベーター理論は、マーケティングに携わっていなければ聞き馴染はないかもしれませんが、これから新しいサービスを市場に投入しようとしている起業家やマーケターにとっては大切な理論の1つです。

そこで今回は、新商品・新サービスのマーケティングに必要なイノベーター理論についてお話したいと思います。

イノベーター理論とは

イノベーター理論(Diffusion of Innovation Theory)とは、スタンフォード大学の社会学者エベレット・M・ロジャース(Everett M. Rogers)が提唱した、新製品や新サービスが市場に普及する様子を説明する理論のことです。

イノベーター理論では、製品やサービスのユーザー(利用者)になるタイミングの違いによって、市場が5つの利用者層に分かれるとしています。

イノベーター理論

Diffusion of Innovation Theory

イノベーター(2.5%)

イノベーター(Innovators)とは、世の中にない新しい商品や革新的な技術にいち早く反応し、積極的に利用する層のことで、市場の2.5%を占めます。とにかく新規性や革新性が好きなため、商品の良し悪しは二の次です。

たとえば、まだFacebookに買収される前の2010年から、アメリカのAppleIDを取得してインスタグラムを利用していた人たちはイノベーターと言えます。

アーリーアダプター(13.5%)

アーリーアダプター(Early Adopters)とは、トレンドに敏感で、価値がある商品を見つけることが得意な層のことです。市場の13.5%を占めます。情報を集める能力だけでなく、発信する能力も高いため、今でいうとインフルエンサーの役割をする人です。

2012-2013年にかけて、日本でも徐々にインスタグラムユーザーが増えはじめました。ただ、この時期の日本はTwitterが流行り、その後ようやくFacebookが広まりだしたころです。この時期のインスタグラムユーザーはアーリーアダプターですね。

アーリーマジョリティ(34%)

アーリーマジョリティ(Early Majority)とは、アーリーアダプターに影響を受けて新しい商品を取り入れる層のことで、市場の34%を占めます。人に影響されやすく、ミーハーな基質の人が多いですね。

2014-2016年は、企業がインスタグラムを使ったイベントを大々的に行うようになりました。徐々に露出も増え、若者の中でもやっていて当たり前の空気が生まれた時期です。

レイトマジョリティ(34%)

レイトマジョリティ(Late Majority)とは、新しい商品の購入は慎重に考え、人から強く勧められたり、自分にとって本当に必要だと思うものでない限り購入しない層のことで、市場の34%を占めます。

2017-2018年は、レイトマジョリティにまでインスタグラムが浸透した時期でした。この時期にインスタグラムを始めた人は、おそらく「インスタ映え」から入った人なのでしょう。

ラガード(16%)

ラガード(Laggards)とは、新商品や新しい技術に興味があるどころか、どちらかというと敬遠する層のことで、市場の16%を占めます。自分には必要がないと考えていたり、あえて購入しないようにしている人もいます。

インスタグラムは、今レイトマジョリティからラガードにまで浸透する2-3歩手前といったところです。そのため、レイトマジョリティに対するマーケティングを充実させれば、ラガードにまで届くかもしれません。

イノベーションが普及する5つの要件

エベレット・M・ロジャースは、著書の「Diffusion of Innovation」の中で、イノベーション(新商品・新サービス)が普及するためには以下の5つの要件が必要だとしています。

比較して優れている

20世紀に入って、交通手段が馬車から自動車に変わったように、新しいアイデアや技術が使われていることによって、従来の商品と比較して優れているものでなければいけません。

生活に馴染みやすい

固定電話が携帯電話に変わったことは大きな変化でしたが、個人の生活に馴染みやすく、利便性が高い変化だったため広く受け入れられました。

簡単でわかりやすい

LINEは、現在SNS利用者(メッセージアプリ含む)約7500万人の中で利用率が80%を超えています。これはLINEがメッセージのやり取りをするだけで、使い方がいたってシンプルなツールだからです。

LINEの利用率は80.8%、ICT総研調査 – ケータイ Watch

実験的に試しやすい

実験的に試しやすいとは、高価でなかなか試しづらかったり、試すとやめにくかったりなどのデメリットがないもののことです。

周囲に影響しやすい

携帯からスマホに変わっていく過程は、電車の中や街中で日一日感じることができました。そのため、見た目でスマホの普及度合いがわかり、「そろそろ変えようかなぁ。」と思わせることができました。

各層に対するマーケティング戦略

イノベーター理論において、新しい商品の普及度が5層に分かれているのは、前述した通りそれぞれの持つ特徴が違うためです。これらの5層のどの段階にあるかによって、企業が取る戦略は変化します。

イノベーターに対する戦略

イノベーターに対する戦略は、革新的なテクノロジーを使っていることや新しい概念をもたらす商品であることをアピールしなければいけません。

一見難しそうに思えますが、初期市場で求められることは目新しさだけです。そのため、これまでにないものであれば、イノベーターの方から勝手に飛びついてくれます。

アーリーアダプターに対する戦略

アーリーアダプターに対する戦略は、新しいだけでなく次の時代を作ることを予感させなければいけません。新しい商品によって何がもたらされるか、個人よりも市場に対するベネフィットを示すことが大切です。

所有することや利用することに影響力があると感じれば、アーリーアダプターは熱心に情報を発信してくれます。

アーリーマジョリティに対する戦略

アーリーマジョリティに対する戦略は、アーリーアダプターの発信を後押しする施策やインフラを提供すると良いでしょう。

簡単なものでは、SNSを使ったキャンペーンを行ったり、早期利用者にメリットを提供することで、アーリーアダプターからアーリーマジョリティにつながる架け橋を作ることができます。

一般的にアーリーアダプターからアーリーマジョリティにつなげることがもっとも難しいと言われています(キャズム理論)。

レイトマジョリティに対する戦略

レイトマジョリティに対する戦略は、商品利用のメリットというよりも、商品利用によってメリットを得ている人が多くいることをアピールすると良いでしょう。商品利用しないことがデメリットであると感じさせなければいけません。

様々な企業と連携したイベントを行ったり、大規模な広告戦略をするなど何度も商品を見聞きするようにし、ザイオンス効果によって良い印象を与えるようにします。

ラガードに対する戦略

ラガードに対する目新しい戦略を取る必要はありません。アーリーマジョリティ、レイトマジョリティに対して、商品離れが起きないようにフォローすることで、ラガードの中から徐々に必要性を感じて、利用者が増える可能性があります。

インスタグラムはこれ以上増えないと予想

さて、冒頭でお話した通り、インスタグラムの月間利用率(MAU)は29%で、イノベーター理論に置き換えるとアーリーマジョリティ層だということがわかります。

ただし、SNSの利用者自体が10-30代中心のため、年齢別人口で考えるなら、インスタグラムの月間利用率は少なくともアーリーマジョリティは超えているのではないかと予想します。

つまり、レイトマジョリティに対する戦略である「商品利用によってメリットを得ている人が多くいること」「商品利用しないことがデメリットであること」を強く感じさせなければいけないということです。

ところが、WEBサービス(とくにSNS)は、mixiにしろ、Twitterにしろ、Facebookにしろ、あと一歩のところでなかなかレイトマジョリティに浸透しないツールになっていますね。

これはひとえに、SNSが面白さやコミュニケーション以上のメリットをそれほど感じないからではないかと思います。そのため、個人的な意見としては、インスタグラムもここらで頭打ちではないかなと。

一方、LINEの利用率が80%を超えたのは、通常連絡手段としての地位を獲得し、使わないことにデメリットを感じるまでになったからだと思います。

このように考えると、イノベーションを起こす新しい商品やサービスがどのような価値を生み出すかで、市場でどれくらい使われるかが予想できるのではないでしょうか。