ザイオンス効果とは?好感度が上がる回数と逆効果になる原因

ザイオンス効果

日用品メーカーがテレビCMを流す理由

販売戦略に携わっている人ならわかると思いますが、一般的には単価が高く、利益率が高い商品には、広告費を投下して大勢の中からユーザーニーズを見つけたいと考えます。

たとえばテレビの場合、平日の19-22時はゴールデンタイムと呼ばれ、平均視聴率20%を超える可能性がもっとも高い時間帯です。

この時間帯にテレビCMを流せば、2000万人以上(家族を含めるとそれ以上)の人がCMを見る可能性があるため、ある程度のユーザーニーズが見つかるかもしれないわけです。

ただし、テレビCMを流して視聴率が20%だとすると、CM1本あたり150-200万円程度(場合による)になります。1時間4本のCMを毎週1年間流し続けると、少なくとも3億円以上の広告費が必要になります。

ところが、ゴールデンタイムに流れるCMは単価が安い日用品が多いですね。しかも日用品は、わざわざユーザーニーズを見つけなくても生活に必要な品物です。

なぜ、日用品メーカーがそのような戦略をとるのか、そこには「ザイオンス効果(単純接触効果)」という行動心理学が隠れています。

今回は、ザイオンス効果の役割と使い方についてお話したいと思います。

ザイオンス効果とは

ザイオンス効果(Zajonc effect)とは、アメリカの心理学者ロバート・ザイオンスが発表した説で、対象に対する興味や好意が対象に接触する回数に比例して増していくという効果のことです。「単純接触効果」とも呼ばれます。

初めはまったく興味がない人でも、何度も会ううちに好印象に変わったこと、嫌いだった曲を何度も聞いているうちに好きになったことは、誰にでもあると思います。

接触回数が増えると、対象への警戒心や無関心さが薄れ、親近感を持つという経験は、映像や音楽、人に限らず、わたしたちの周りでさまざまな事例が思い浮かびますね。

ザイオンス効果の実証実験

ロバート・ザイオンスはいくつも効果検証の実験を行いましたが、その中の1つがアメリカの大学生にさまざまな漢字を何度も見せて、その漢字の意味を想像してもらうという実験でした。

実験の結果、見た回数が多い漢字ほど、良い意味を答えた回数が多かったそうです。

こころ学 – ただ目にするだけで|京都大学こころの未来研究センター

ザイオンス効果が起きる理由

では、接触回数が多いほど、好印象を抱きやすい理由はなんでしょうか。

日本心理学会の研究論文によると、対象者がある刺激に接触し続けることで、刺激に対する知覚情報処理レベルでの処理効率が上昇するため、刺激への親近性が高まることがわかっています。この親近性の高まりが、刺激に対する好印象として誤って認識されるというものです。

バナー広告への単純接触が商品評価と購買意図に及ぼす効果,Cognitive Studies, 14(1), 133-154. (March 2007),松田 憲・平岡 斉士・杉森 絵里子・楠見 孝

ザイオンス効果のマーケティング事例

接触回数によって好感度が増すというザイオンス効果は、営業やマーケティングなど、現在のビジネスシーンに大きな影響を及ぼしています。

テレビCMなど広告類の事例

もっともわかりやすい事例は、冒頭で話したテレビCMです。日用品は単価が安く、利益率も低い商品ですが、単純な接触回数が増えることで良い印象を与える効果が見込まれます。

また、単純な接触回数が増えると、インプレッション効果が期待できます。インプレッション効果とは、何度もテレビCMを見ることで、商品名や企業名だけでなく、CM内の演出や音楽、ロゴマークなど合わせて記憶させる効果のことです。

つまり、このような刷り込みがあることで、テレビCMを見た瞬間にニーズが喚起されなくても、スーパーなどで商品を見た際に、刷り込まれた記憶を思いだして、商品を手に取るきっかけを作っているわけです。

営業活動など顧客との関係性の事例

優れた営業マンの条件の1つに、「大した用事がなくても、電話をしたり、オフィスに遊びに行けるお客さんがいるか。」というものがあります。

わたしが営業をしているときに、上司によく言われた言葉です。好感度が高い営業マンは、お客さんに接触する頻度が高く、結果的にそれが仕事につながります。

また、アメリカの経営雑誌「Harvard Business Review」によると、お客さんが離れてしまうもっとも大きな原因は、お客さんとの接触頻度が下がることが原因だそうです。

つまり、顧客を作り、顧客と良い関係を築くためには、ザイオンス効果が非常に有効だということです。

ザイオンス効果が逆効果になる原因

「商品を売ったり、売上を作りたいなら、何度も広告を出したり、無理矢理でも会えばいいのか……。」と考えるのは間違いです。ザイオンス効果は、魔法ではないため、逆効果になる場合もあります。

初めから嫌悪感を持っているため

ザイオンス効果は、あくまでも警戒感を持っている人や無関心な人に有効で、初めから嫌悪感を持っている人に良い印象を与えることは困難です。

テレビCMで無意味な商品名の連呼、良い場面で何度もCMを流す、はっきり断られているのに営業に行くなどの行為は、人によっては嫌悪感を抱かせます。

明確な理由があって嫌悪感を持っている人が、その対象への接触回数が増えると、負のスパイラルで余計に嫌いになる可能性があります。

つまり、前述したザイオンス効果が起きる理由に照らすと、刺激に対する知覚情報処理レベルが上がったとしても、その刺激が好印象ではなく悪印象に認識されてしまうこともあるのです。

接触回数・頻度が多すぎるため

広告マーケティングの理論に、「セブンヒッツ理論」という認知に関する考え方があります。それは、ユーザーがCMに3回接すると商品を認識し、7回接すると購買に至る確率が上がるというものです。

ただし、7回を超えるとそれ以上購買確率は上がりません。つまり、7回を超えると「もう見たくないんだけど……。」と思う人が出始めるということですね。

もちろん接触回数だけでなく、接触頻度が高すぎても、良い印象を悪い印象に変えてしまう恐れがあります。

ザイオンス効果を活用するコツ

ザイオンス効果を使いこなすためには、さり気なさが大切です。

思い出してみると、ゴールデンタイムに流れるCMは商品やブランドの主張が強いものではなく、イメージCMが多いはずです。何度も会う仲の良い営業マンは、恩着せがましくなく、すぐに仕事をアピールしてこないはずです。

そう言えば、女の子に人気があった友人は、女の子に気を使わせることなく、後から気付くくらいのさりげない優しさを出せるやつでした。

人によっては、「AIDMA」を思い出すとわかりやすかもしれません。人の購買パターンは、Attention(注意)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)という心理変化によって起こります。

そのため、注意を惹いて認識させ、徐々に興味に変えて、欲求を抱くようになれば、記憶に残り、それが最終的な購買行動に結びつきます。

この流れを無視して、Attentionから一気にActionに移すような働きかけをしないようにしましょう。

というわけで、ザイオンス効果は、その本質を間違えずに、正しく使うようにしてください。