ブランドコンセプトの元になるブランドストーリーの作り方と事例

ブランディングにはコンセプトが必要

わたしたちは、「誰もが行っている目新しくない商売において、独自のコンセプトを作り、明確なターゲットを設定し、特定のポジションを築くこと」で、他社との差別化を図ってビジネスを行います。

この行為を「ブランディング」と言います。

ブランディングには3つの要素があります。それは、「コンセプト(コンセプトデザイン)」「ターゲット(ターゲティング)」「ポジション(ポジショニング)」です。

この中でもコンセプト(コンセプトデザイン)は、当たり前のように思えてほとんどの企業ができていません。では、どのようにコンセプトを作れば良いのでしょうか。

今回のテーマ
今回は、ブランディングにおいてコンセプトの作り方がよくわからない人のために、次の内容をお話します。

  • ブランドのコンセプトが明確な企業の事例
  • コンセプトを作るストーリーの事例
  • ブランドストーリーを作るための12項目

それでは早速見ていきましょう。

ブランドのコンセプトが明確な企業の事例

世の中には、明確なコンセプトを打ち出しやすい企業とそうではない企業がありますが、コンセプトを打ち出しやすい企業の方が圧倒的に少ないはずです。

明確なコンセプトを打ち出し、ブランディングに成功している例としてフェラーリがあります。

「フェラーリ・ネバー・アドバタイズ」

フェラーリはけっして広告をしない。広告などする必要がない。買いたい者は、「売ってください」と頭を下げてやってくる。

【フェラーリ神話】創業以来、宣伝広告費はゼロ! | オートックワン

フェラーリは宣伝広告にお金をかけていません。

宣伝広告とは、顧客に対して商品のメリットを伝え、購入を求める行為です。対してブランディングは、顧客がベネフィットを想像して、自ら購入を求めるよう誘導する行為です。

フェラーリは徹底的に製品の良さを追求することで、強烈なブランディングを行っています。このブランディングがフェラーリのポジションを確立し、フェラーリを保有することに価値を感じた顧客を取り込むことにつながっています。

わたしたちのビジネスが、フェラーリのようなコンセプトを掲げられるわけではありません。では、どのようにコンセプトを作れば良いのでしょうか。

コンセプトを作るストーリーの事例

ブランディングに必要なコンセプトを作るためには、ストーリーが必要です。ブランドストーリーなどと言ったりします。以下は、コンセプトの元になるストーリーの事例です。

とある駅近くに店を構えるフレンチレストランは、オープンから半年ほど経った小綺麗なお店です。裏手にあるため、車通りも少なく、静かで、知る人ぞ知る良いお店といった雰囲気。

その店では、1年を春夏秋冬+季節の変わり目の7季節に分け、その季節に応じた野菜や肉・魚を使って、季節毎に3つのコース料理を提供しています。

コースメニューは8種から10種、コースの値段は9,000円、13,000円、16,000円に分かれていて、シェフが選ぶワインが1杯サービスされます。

ワインは世界30か国、150種類以上のワインが常備され、大きなワインセラーとワインクーラーが顧客の見える位置に備え付けられています。

ワインは、その日の気温や天候、素材の状態、顧客の好みによって、150種類の中から一番最適なものをシェフ自ら選び、なぜそのワインが最適なのかという理由付きで用意してくれます。

また、予約の段階で記念日だと伝えると、名前が入ったデザートのサービスに加え、記念日用のワインを選んでもらえます。

このフレンチレストランの名前は「ma cherie(マ・シェリ)」、大切な人という意味です。

「大切な人と食事をする際にご利用ください。いつご来店されても、異なる特別な時間をお届けします。」というコンセプトがあります。

このフレンチレストランは、実在しない想像上のレストランです。

サービスや価格帯などは、ありがちな内容だと思います。もちろん、駅前にあるフレンチレストランは1店舗だけではありません。

現実の世界でも、駅近くには数店舗のフレンチレストランはあると思います。では、みなさんは現実にあるフレンチレストランの内容について、どの程度理解しているでしょう。

もし、あなたがもうすぐ結婚記念日だったり、恋人の誕生日に外食したいと思っている時に、たまたまこのフレンチレストランの上記の内容を知ったら、行くお店の候補になると思いませんか?

見込み客、または見込み客の候補に対して、商品やサービスの特徴を正しく伝えて、認識させることが価値につながります。価値を意図的に伝え、共感や信頼を得る、これがブランディングの第一歩です。

ブランドのコンセプトになるストーリーの作り方

もちろんこのフレンチレストランは、上記すべての内容をコンセプトに据えて、ブランディングしていくわけではありません。

まずブランディングに必要なことは、企業や商品、サービスに対する特徴、いわゆる「USP(Unique Selling Proposition)」を自分たちで認識することです。

コンセプトは、無理やり作るものではありません。あなたが商売をする上で大切にしていることを、しっかりと言葉にすることがコンセプトになります。

ただ、いきなりコンセプトを作れと言われても難しいものです。その場合、まずは長めのストーリーを作ります。上記がこのフレンチレストランのブランドストーリーです。

ブランドストーリーは、以下の12の項目に当てはめながら作ってみると良いでしょう。

ブランドストーリーを作る12の項目
誰が、どこで、どのような環境で、何を、どのように、いくつ、いくらで、(誰と)誰のために、なぜ、いつ(いつからいつまで)、何を提供する、プラスアルファのメリット

では、12の項目でブランドストーリーの作り方を具体的に説明していきます。

①誰が

私たちマ・シェリが

②どこで

とある駅近くに店を構え、裏手通りにあるため、車通りも少なく、静かで、知る人ぞ知る良い雰囲気のお店で

③どのような環境で

世界30か国、150種類以上のワインが入ったワインセラーが見える環境で

④何を

フレンチのコース料理を

⑤どのように

1年を春夏秋冬+季節の変わり目の7季節に分け、その季節に応じた野菜や肉・魚を使って

⑥いくつ

季節毎に3つのコース料理の中から

⑦いくらで

9,000円、13,000円、16,000円に分かれたコースで

⑧(誰と)誰のために

あなたとあなたの大切な人のために、

⑨なぜ

特別な時間を過ごしてもらうため

⑩いつ(からいつまで)

誕生日や結婚記念日等に

⑪何を提供する

フレンチを提供する

⑫プラスアルファのメリット

コースに付加される1杯のワインのサービス
食事に合ったワインをうんちく付きでシェフが選定
誕生日には名前入りのデザートとワインを1杯サービス

ブランドストーリーを作るポイント

12項目に当てはめてお店の特徴を挙げることができれば、あとはブランドストーリーとして文章に落とし込みます。

コンセプトの元になるブランドストーリーを作るためには、12項目以外にもポイントがあります。以下の2点に注意して、ブランドストーリーを作りましょう。

業界の当たり前は一般消費者の当たり前ではない!

どのような商売をしていても、市場認知度が100%になることはありません。ましてや、商売の特徴や良さを伝えることは……、推して知るべしといったところ。

つまり、その業界では当たり前のことでも、一般人には当たり前ではないということです。

わたしは、フレンチレストランの関係者ではありません。そのため、上記のストーリーを見て、「こんなことまで言わなくても、お客さんはわかってるよ!」とフレンチレストラン関係者に言われるかもしれません。

でも、それは業界関係者だから当たり前なだけで、一般消費者は知らないことなのです。

仮に知っていたとしても、特徴として伝えなければ、市場に対して「その企業(お店)にそのサービスはないのかな?」という不安を与えてしまいます。

自分たちの特徴を伝えることは良いことだと思え!

宣伝広告でもそうなのですが、自分たちの特徴や良さを伝えることに抵抗がある人がいます。とくに物作りをしている職人やシェフあがりの経営者は、多いように感じます。

この人たちは、良い物を作れば顧客は来てくれると思い込んでいます。「過大に自分たちを良く見せる必要はない、顧客が評価してくれるはずだ。」と。

残念ながら大きな間違いです。評価をするのは顧客ですが、自分たちの良さや特徴を伝えないということは、評価の土俵にさえ上がっていないということを認識するべきです。

自分たちが作っているものが本当に良いもので、体験すれば良さを理解してもらえる自信があるなら、特徴を打ち出して宣伝広告することは、顧客にとってメリットです。

またその逆で、「言っても素人にはわからないから。」と考える方もいますが、こちらは論外です。顧客を選ぶ行為は良いことですが、わかってくれる顧客を選ぶ努力をしていません。

別に、「味のわかる方だけお越しください。」という打ち出しの飲食店でも良いのです。こちらの方がしっかりとしたブランディングになります。

ブランドストーリーを作る12項目まとめ

ブランドを作るコンセプトは、必ず短文やキャッチコピーに落とし込まなければいけないわけではありません。

まずは、「誰に、何を提供して、どのようなメリット(ベネフィット)を感じてもらうか」を長文で良いので、ストーリー仕立てで把握することが大切です。

そこから、必要に応じて「社長の思い」であったり、「キャッチコピー」に落としこむことで、伝えるべきコンセプトが明確になり、ブランディングにつながっていきます。

もちろん、コンセプトができたからといって、ターゲットやポジションがはっきりしていなければ、良いブランディングは行えません。

次回は、ターゲットやポジショニングに関してもお話していきたいと思います。

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