リーダー・フォロワー・ニッチャー企業のポジショニング戦略とは

ポジショニング戦略とは

ポジショニングとは

ポジショニング(positioning)とは、自社商品と競合他社商品を比較して、市場で自社商品が優位になる立ち位置を作ることです。

ポジショニングは相対的な指標のため、商品に対する点数など絶対的な数値を用いずに、顧客に商品や企業の価値をマインドセットする必要があります。

経営学者のフィリップ・コトラーは、市場には企業がとる4つの戦略ポジションがあると提唱しました。

市場における4つの戦略ポジション
リーダー企業|業界の最大手企業
チャレンジャー企業|リーダーを追いかける2、3番手企業
フォロワー企業|リーダー、チャレンジャーに追従する企業
ニッチャー企業|別角度で専門的な市場を形成する企業
今回のテーマ
今回は、ポジショニング戦略がよくわからない人、自社が取るべきポジションを詳しく知りたい人のために、次の内容をお話します。

  • ポジショニング戦略の具体的なポジションとは何か
  • 中小企業が市場でとるポジションとは
  • っとも多いフォロワー企業がとるべき戦略

それでは早速見ていきましょう。

具体的な4つの戦略的ポジション

企業は、市場において以下の4つの戦略的ポジションを意識して、どの立場を取るのかを考えなければいけません。

リーダー企業の戦略

リーダー企業とは、市場において強力な商品開発力と潤沢な資金を持ったトップシェア企業のことです。リーダー企業は、他社よりも優位な資源をもとに、「コストリーダーシップ戦略」をとります。

コストリーダーシップ戦略とは

コストリーダーシップ戦略とは、資金力、技術力、販売チャネルなどを活かした「フルライン戦略(幅広い品種や価格帯を取り揃える戦略)」によって商品の低コスト化を実現し、商品価格の決定権を握る戦略のことです。

リーダー企業のブランディング

リーダー企業のブランディングの特徴は、業界最大手という存在感をアピールして、顧客にスケールメリットを提供する企業になることです。

もちろん、市場において価格決定権を握ることは大きな強みですが、莫大なコストがかかるため、製品ライフサイクルの終焉と共に企業が衰退する恐れがあります。

チャレンジャー企業の戦略

チャレンジャー企業とは、市場の2番手、3番手のシェアを持ち、リーダー企業に追いつくための競争をしかける企業のことです。チャレンジャー企業は、業界最大手のリーダー企業に対向するために、「差別化戦略」をとります。

差別化戦略とは

差別化戦略とは、リーダー企業が手を付けていない独自性のある機能、サービスの充実、デザイン、新しい地域性、ブランドイメージなどの価値に注力し、商品の差別化を図る戦略のことです。

たとえば、2000年にJフォンが出したカメラ付き携帯は、携帯電話に新しい価値観を与えたことで爆発的にヒットし、2002年3月にはauを抜いて業界第2位に躍り出る原動力になりました。

チャレンジャー企業のブランディング

チャレンジャー企業のブランディングの特徴は、名前の通りチャレンジスピリットをアピールして、あらゆる角度から商品の差別化を図る企業になることです。

ただし、商品の差別化は競合他社に模倣されることで、すぐにその優位性が無くなる可能性があります。

フォロワー企業の戦略

フォロワー企業とは、リーダー企業やチャレンジャー企業の戦略に追従しつつ、敵対しない様に利益率が低い市場にポジショニングする企業のことです。フォロワー企業が取る戦略は「模倣戦略」です。

模倣戦略とは

模倣戦略とは、リーダー企業、チャレンジャー企業による価値付けを素早く模倣して、独自の狭い商圏で展開していく戦略のことです。

フォロワー企業のブランディング

フォロワー企業のブランディングの特徴は、アフターフォローなど商品以外のプラスアルファの価値付けであり、誰でもできることを誰よりも手間をかけて行うことをアピールして、市場の信頼を勝ち取る企業になることです。

ただし、独自の狭い商圏は常に市場淘汰のリスクをはらんでいます。リーダー企業やチャレンジャー企業だけでなく、同じフォロワー企業の動向にも注意して、収益性を高めなければいけません。

ニッチャー企業の戦略

ニッチャー企業は、リーダー企業やチャレンジャー企業が参入してこない専門的な市場で、地位を確立する企業のことです。ニッチャー企業は、ある程度のリソースを持ちつつも大手には敵わないため、ニッチ市場で「集中型戦略」をとります。

集中型戦略とは

集中型戦略とは、特定のセグメントに対して経営のリソースを集中する戦略のことで、有名なランチェスター戦略においては「集中効果の法則」と呼ばれます。つまり、強者にはできないことを見つけ、新しいニッチな市場を発掘する戦略のことです。

ニッチャー企業のブランディング

ニッチャー企業のブランディングの特徴は、大手とはまったく別の角度で市場のポジショニングを行います。たとえば、スズキは、軽自動車に的を絞って経営資源を集中することで、軽自動車市場において34年連続国内No1の実績を残しています。

さらに専門性を活かして、チャレンジャー企業である日産にOEMを提供したり、いち早く拠点をインドに移して市場を独占するなど、ニッチ市場の裾野を拡大する成長を遂げています。

スズキの経営戦略や強みなどを独自分析-経営コム-

中小企業がとる最適なポジショニング戦略

日本の企業400万社のうち、99%は以上は中小企業(零細企業含む)です。また、9割ほどが従業員数5名以下の企業です。これらの中小企業の最適なポジショニングとは何でしょうか。

4つの戦略的ポジションの関係性

まず、4つの戦略的ポジションの関係性を見ると、以下の構造になっています。

4つの戦略的ポジションの関係性
  • リーダー企業が、チャレンジャー企業に圧力をかける
  • チャレンジャー企業が、フォロワー企業に圧力をかける
  • フォロワー企業は、ニッチャー企業になろうと努力する
  • ニッチャー企業は、上を見ずに我が道を行く
  • リーダー企業は、ニッチャー企業に関心がない

このように4つの戦略的ポジションを見ると、中小企業の多くは大手の戦略に追従しつつ、敵対しない立ち位置のフォロワー企業で、その中の一部がニッチャー企業になります。

小さな市場でも4つの戦略的ポジションがある

多くの中小企業にとっては、リーダー企業やチャレンジャー企業のブランディング、ポジショニング戦略は関係ないように感じるかもしれません。

ただ、インターネット網や物流網の拡大で商圏は広がったものの、一定の商圏では規模の小さな市場が無数に存在し、その市場の中で中小企業同士の戦略的ポジションが存在します。

つまり、市場規模の大小はあれど、狭い商圏においては、中小企業でもリーダー企業やチャレンジャー企業になるかもしれません。

そのため、わたしたちは自社がこの4つの戦略的ポジションのどこに分類されるのかを市場毎に見極め、その中でブランディングに取り組む必要があるわけです。

もっとも多いフォロワー企業がとるべき戦略

市場によって、企業がとるべき戦略が変わることはわかったと思います。また、市場規模によって、自社の立ち位置を理解することが大切なこともわかったはずです。

ただ、限られた市場の中でも、やはりフォロワー企業がもっとも多くなります。

もちろん、市場競争の中で動きを止めた企業は衰退していくため、もっとも割を食いやすいフォロワー企業はポジションチェンジを迫られる場合があります。

そこで、フォロワー企業がとるべき戦略は、ニッチャー企業の道を模索するか、チャレンジャー企業にのし上がるかの2択になります。

「鶏口となるも牛後となるなかれ」の言葉通り、狭い商圏でもより良い市場のポジションを取る行為は、企業ブランディングを楽なものにしてくれます。

とは言え、狭い商圏のリーダー企業は、より大きな商圏ではフォロワー企業であることも間違いありません。

企業は、常に競争下におかれることを認識し、相対的なポジションを意識し、場合によっては市場に合わせた複数のブランディング、ポジショニングを行わなければいけません。

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