ペルソナマーケティングとは?具体例とメリット・デメリット

ペルソナマーケティングとは

ペルソナとは、元々心理学用語で外的人格、仮面をかぶった人格という意味があります。

マーケティング業界では、ペルソナは架空の人物を設定した顧客プロファイルのことで、製品やサービスに対する理想の顧客をあらわします。

これまでマスコミで広く使われていた顧客層をあらわすマーケティング用語と言えば、20歳-34歳女性の「F1層」、20歳-34歳男性の「M1層」などが思い浮かびます。

たとえば、F1層は「ブランドや自己投資など消費傾向が強く、トレンドにも敏感なため、新商品を販売する場合はまずF1層に対してマーケティングを行う」ことが定説でした。

ところが2000年代以降、生活や思考の多様性から、年齢と性別だけでは市場の消費傾向を把握できなくなりました。

そのため、多くの企業が自社商品のマーケティングにペルソナを用いて、商品に合わせた独自の趣味趣向を分析することが当たり前になりました。

このように、あるセグメントの代表的な特徴をもつ架空の顧客を設定し、その顧客に向けたアプローチで商品企画やプロモーションを行う手法を「ペルソナマーケティング」と呼びます。

今回のテーマ
今回は、ペルソナを設定したペルソナマーケティングについて詳しく知りたい人のために、次の内容をお話します。

  • 具体的なペルソナの例
  • カルビーのペルソナマーケティングの事例
  • ペルソナマーケティングのメリット・デメリット

それでは早速見ていきましょう。

具体的なペルソナの例

一般的なペルソナは、性別や年齢だけでなく、生活スタイルまで想定して詳細に人物像を作ります。たとえば、30代後半女性に向けた高級基礎化粧品のペルソナ事例を見てみましょう。

30代後半女性に向けた高級基礎化粧品に関するペルソナ例
田島京子さん40歳、女性、既婚、東京都在住。子どもは、7歳の小学2年生の女の子と5歳の保育園年長の男の子。今は旦那さんだけが働いているので、世帯年収は660万円。

31歳で結婚したが、それまではキャリア志向が強く、専業主婦の今でもノートPCを使って、出産前まで働いていたブライダル誌の業界情報を調べ、以前の職場の同僚と意見交換をしている。

月に1度、都内中堅出版社で課長職を務める44歳の夫に子どもを預けて、以前の同僚と女子会を開き、職場談義に花を咲かせつつ、業界の情報を仕入れながら現場感を忘れない会話をしている。

というのも、長男が小学生にあがったときに以前の職場に復帰する計画を立てており、現在住んでいる都内15万円/月のマンションから、郊外に家を持つ計画を立てているためだ。

そのため、現在の生活は倹約に努めており、出産前までのように化粧をしたり、エステに行く回数も減ってしまった。化粧をしないことには慣れた彼女だが、近所のママ友には「いつまでも若いわね。」「肌がキレイね。」とは言われたいと思っている。

基本的な肌のお手入れだけは欠かさないようにしているが、これからさらに時間がなくなることが悩みの一つ。50歳までは、夫と子どもたちのためにも、少しでもキレイな女性でいられるようにがんばりたいと思っている。

容姿や性格など、本当はもっと細かいことまで描写できた方が良いですのですが、上記を読むと、背景も含めてこの女性のことを何となくイメージできると思います。

ペルソナマーケティングの事例

自社商品でも、他社のマーケティングを行う場合でも、一番効果的にペルソナを活用できるシチュエーションは、新しい商品を販売する時です。

新しい商品を販売する際にもっとも意識することは、「その商品は誰を対象に開発されたものなのか?」「その対象にどのようなベネフィットがあるか?」ということです。

次は実際の事例として、カルビーが行ったお菓子のペルソナマーケティングを見てみます。

カルビーはそれまで20~30代の独身女性の需要が少ないのが課題であったため、定量データをはじめ、独身の女性社員にミーティングに参加してもらうなど顧客像を固めていき、「27歳」「独身女性」「文京区在住」「ヨガと水泳に凝っている」といった具体的なユーザーモデルを作った上で、開発を進めていきました。

ここに挙げたプロフィールはほんの一部ですが、プロフィールから文京区に住むオシャレな20~30代の独身女性が想像できます。
パッケージは文京区在住のオシャレな20~30代の独身女性の部屋にあっても違和感がなようなデザインを採用し、ジャガビーの商品サイトはユーザーモデルの部屋をイメージしてデザインするなど、ペルソナマーケティングに沿って商品開発が行われました。

テレビCMでは女性ファッション雑誌「Oggi」で活躍するモデルのヨンアさんを起用するなど、ターゲットとする20~30代の独身女性に訴えかける施策を採用しました。

カルビーの大ヒット商品・ジャガビーから学ぶペルソナマーケティングの事例 | マーケティング | エンジニア・Webデザイナー向けのウェブマガジン scrmble

お菓子と聞くと子供をイメージしますが、ジャガビーは初めから若い女性をターゲットにした商品でした。

カルビーのマーケティングチームは、ジャガビーのターゲットを細かく分析してペルソナを作り上げ、ペルソナが一番興味を示すマーケティング戦略を行ったたことで大ヒットに繋がりました。

マーケティング戦略にペルソナを設定するメリット

マーケティング戦略において、明確なペルソナを作ると以下のメリットがあります。

理想とする顧客の消費動向を予想できる

ペルソナを作る際は、理想の顧客像に対して、徹底的に生活スタイルや心情面での分析を行います。そのため、ユーザの行動や心の動きに対して細かな理解を深められます。

理想とする顧客を関係者で共有できる

ペルソナを作ることで、ステークホルダー間でターゲットのズレや思い違いを防ぐことができます。これは話し合いの質を高め、無駄な議論をなくすコストカットの効果もあります。

事業の方向性が決まり選択と集中が容易になる

ペルソナが設定されていれば、その背景からマーケティング戦略の幅が絞り込まれるため、業務の選択と集中が可能になります。

商品の完成度を高められる

ペルソナを基に商品を見なおせば、商品改良情報は比較的簡単に収集できます。また、ペルソナが必要とする機能やサービスを定期的にリリースすることで、効率的に市場に情報を提供することができます。

商品の企画段階で計画書が通りやすい

商品の企画段階においては、ペルソナを設定することで顧客のイメージが明確になるため、企画書が通りやすくなります。これは内部の話だけではなく、クライアントに対する企画書でも同様です。

ペルソナを設定するデメリット

ペルソナの設定は、マーケティングに大きなメリットをもたらしますが、以下のデメリットもあります。

時間とコストがかかる

ペルソナを作り上げるためには、いくつもの工程が必要です。イメージだけで勝手にペルソナを作ることはできないため、インタビューを行ったり、リサーチを行うこともあるでしょう。そのため、時間もコストもかかります。

大胆な発想を潰してしまう

ペルソナを設定するということは、効果的にターゲットを絞り込むということです。それはとても良いことなのですが、ターゲットを細かく絞り込んだゆえに、大胆な発想ができなくなることがあります。

効率的なマーケティング手法であるペルソナマーケティングも、大胆なイノベーションをおこしたいときには効果が薄れてしまうかもしれません。

間違ったペルソナを作ってしまう

効果的なペルソナを作り上げるには、仮定や推論がある程度正解に近いものでなければいけません。そのためには、綿密なリサーチと細かいインタビューが必要です。

もしペルソナデザインにリサーチやインタビューなどの費用をかけられなければ、イメージだけが先行してしまい、仮定や推論が正解から大きく外れる可能性があります。

とくに以前のマスマーケティング用語である「F1」などのイメージを引きずると、デモグラフィックだけでペルソナを判断しがちです。

デモグラフィックとサイコグラフィック

デモグラフィックとは、年齢、性別、世帯規模、所得、職業、学歴などの具体的な属性情報を指します。通常のリサーチにおいては、これらの属性情報で絞り込んでから、個人的な行動や思想の分析がスタートします。

サイコグラフィックとは、価値観、ライフスタイル、性格、好み、将来の希望などの心理的特性のことを指します。デモグラフィックからはサイコグラフィックの内容はわからないため、インタビューなどを通じて情報を引き出します。

ペルソナにおいては、デモグラフィックよりもサイコグラフィックの方が重要ですが、サイコグラフィックの分析には時間とコストが必要です。

ペルソナマーケティングが重要な理由

なぜ今のマーケティングで、ペルソナを設定する必要があるのでしょうか。

これまで、商品・サービスの企画や開発に携わった人や社長、事業部長などの責任者ならわかると思いますが、売れる自信がある商品ほどターゲットを広く設定してしまいがちです。

「こんな人に使って欲しい、あんな人に使って欲しい、こういう用途も考えられる、この機能をつけたらこんな人にも利用価値があるかもしれない。」

このような考え方は、情報も流通も限られていて、生活も今ほど多様性がない時代に、マスコミによる大規模な消費意識の誘導ができたから行えた、一時的な現象だと思います。

「潜在意識の法則」を提唱したジョセフ・マーフィー博士は、人間の脳は3%の顕在意識と97%の潜在意識で行動していると説きました。普段わたしたちが意識できる消費行動は、脳の働きからすればたった3%のことに過ぎません。

もし消費者が本当に望むものが、消費者自身も気づいていない97%の無意識な要望だとしたら、ペルソナマーケティングは、潜在意識下の消費行動を把握できる最適な方法なのかもしれません。

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