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楽天がO2Oに本格参入する理由とは
2013年10月15日、楽天がスマポを運営するスポットライトを買収しました。
なぜ楽天はスマポを買収したのでしょうか。
今回は、EC業界を取り巻く状況の変化や売上の観点から楽天がO2O参入に至ったその理由を追ってみたいと思います。
※楽天チェックの特徴と楽天のO2Oに期待することはこちらで考察します。
楽天が危機感を抱く3つの出来事
楽天のビジネスモデルは、ショッピングモールである楽天市場に登録した出店者から、出店料や販売手数料を取得することです。
そのため、以下の3つのことは楽天にとって、大きな危機感を抱いたはずです。
楽天が危機感を抱く3つの事柄
1. Yahoo!Japanが抱えているEC店舗の出店料・ロイヤルティ完全無料化したこと
2. Yahoo!JapanとSTORES.jpの提携によるECサイト出店に対するハードルの低下
3. フリマアプリの流行によって消費者のチャネルが増えたこと
もちろん、この3つの事柄で出店者のハードルが下がったとは言え、それが出店者の売上につながるということではありません。
逆に、楽天に出店料を払っているからと言って、売上が上がるわけでもありません。
楽天市場の売上そのものが、パレートの法則(80対20の法則)に当てはまるはずなので、出店者も同様でしょう。
・上位20%の営業マンが、全体売上の80%をあげる
・20%の上顧客が、総売上の80%を占める
・20%の売れ筋商品が、総売上の80%を占める
40,000店舗×80%=32,000店舗
つまり、8割の店舗(32,000店舗)は大して売上が上がっていないことになります。何かのきっかけで、彼らが楽天市場をやめてしまってもおかしくはありません。
楽天において8割の店舗が持つ売上価値は?
それでは、8割の32,000店舗がどれ位楽天に貢献しているのか見てみます。

楽天における8割の店舗による出店料の算出
楽天市場における、インターネットサービス部門の売上は約1,137億円(2012年)。
前述した8割の店舗も、おしなべて出店料は支払っています。出店者の多くは、19,500円/月のプラン、50,000円/月のプランのどちらかを選択しているはずです。
仮に均して、1店舗あたり平均30,000円が支払われているとするならば、年間で36万円の支出となります。
36万円×40,000店舗=144億円
前述した8割の店舗だと、
32,000店舗の年間利用料売上
144億円×80%=112億円
楽天における8割の店舗による売上手数料の算出
楽天市場での流通総額は約1.4兆円ですので、1店舗当たりの売上は年間約3,600万円。仮に平均手数料を4%支払っているとすると約144万円/年。
144万円/年×40,000店舗=576億円
こちらは、おしなべてではなくて、売上が高いほど手数料総額も高くなりますので、先ほどの80対20で考えると20の方です。
32,000店舗の年間売上手数料売上
576億円×20%≒114億円
楽天における8割の店舗による広告関連売上の算出
楽天市場として他にどのような売上があるのかはわかりませんが、一応上記を差し引くと、広告関連売上として900億円程あることになります。
1,137億円-(112億円+114億円)=911億円
この911億円のうち、32,000店舗で20%を占めているとすると、
32,000店舗の年間広告料売上
911億円×20%≒182億円
楽天における8割の店舗(32,000店舗)からあがる年間売上(2012)
上記の算出により
32,000店舗からあがる年間売上(2012)
112億円+114億円+182億円=408億円
と推定できます。
以前書いたフェルミ推定のようになってしまいましたが、大して売上をあげていない32,000店舗で400億円を売り上げている(かもしれない)楽天としては、前述した内容は危機感を抱くには十分な内容だと思います。
楽天市場の各参考数値(2012)
売上:約1,137億円
流通総額:約1.4兆円
出店店舗数:約40,000店
1店舗当たり売上:約3,600万円
参照:楽天「セグメント別業績」、他
スマポ買収での楽天の狙いは?
スマポとは、こちらのこと。
位置情報から近隣の参加店舗を表示し、チェックインすることで参加店舗の商品券などに交換が可能なポイントが付与されるスマートフォンアプリ
参考:
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DD
楽天が、The O2Oと言えるスマポを買収したことは非常に理に適っています。
すでに、このビジネスモデルを展開するだけの要素と、今後の準備を始めていたためです。
楽天がスマポをすぐに活用できる理由
1.楽天グループが抱える9,000万人のユーザーを実店舗へ送客できる
2.楽天市場が抱える実店舗に対して、すぐにサービス展開ができる
3.実店舗でも楽天スーパーポイントが貯まるようになる(後述)
いずれにせよ、スマホ、タブレットという持ち運び型端末から親和性の高いO2Oにつなげて、店舗に実利を提供するというやり方は、今後数年間のキラーコンテンツになる可能性があります。
今後楽天が、その業態を維持するためには、楽天市場を利用している出店者の80%=32000店舗の満足度を維持する必要があります。
すべての出店者が対象ではありませんが、実店舗を持っている出店者にとって、楽天がオフラインに進出してくれることは歓迎すべきことでしょう。
楽天のO2O参入理由まとめ
今後、楽天市場がこれまでと同じような業態で、同じような売上を維持していくことは難しいはずです。
オンラインでさまざまなサービスを提供してきた楽天の今後の課題は、オフラインに進出していくことです。
そのため、今回のスマポの買収や、今後実店舗で使えるようになる楽天スーパーポイントなどは楽天の今後の発展をかけた大きな挑戦だと考えます。