商品が売れない!ビジネスの現状維持バイアスの意味と事例

現状維持バイアスとは

変化を恐れる気持ちとビジネスの関係

「みんなの生活が便利になる画期的な新商品なのになんで売れないんだろう……。開発に時間とお金をかけたのに……。」

そんな風に仕事で悩んだことはないですか。

市場に新商品を投入した場合、売れ始めるまでに時間がかかることがあります。単純に時間がかかるだけであれば、問題はありません。

ただ、商品が売れない理由が、あなたが売れない商品を作ってしまったのだとしたら……。市場が新商品を受け入れることに抵抗しているのだとしたら……。

生産者側の理由と市場側の理由、どちらにせよ新商品が市場に広がらないのは「現状維持バイアス」が大いに関係しています。

現状維持バイアスとはどのような意味でしょうか。また、ビジネスの現場でどのように現状維持バイアスを意識すれば良いのでしょうか。

今回は、ビジネスで注意すべき現状維持バイアスについてお話したいと思います。

現状維持バイアスとは

現状維持バイアス(Status Quo Bias)とは、人が何かを選択をする際に、選択肢に現状維持が含まれている場合、変化によるリターンよりもリスクを嫌うことで、現状維持を選択してしまう心理的作用のことを言います。

つまり、未体験のものを受け入る変化を恐れて、現状を維持しようという気持ちです。バイアスとは偏りの意味で、転じて思い込みや先入観を意味します。

現状維持バイアスがあることは、決して良いことではありません。経済活動やビジネスの現場では、現状維持バイアスを揶揄した「茹でガエル現象」という言葉もあります。

ゆでガエル現象とは

ゆでガエル現象(ゆでガエル理論)とは、環境の変化に適切に対応しなければ(ビジネスとしての)死を迎えることを説いた教訓のことです。

説明の必要はないと思いますが、一応。熱湯の中にカエルを入れると急激な環境の変化に驚いて飛び出しますが、水を徐々に熱すると温度の変化に気付かずに茹で上がって死んでしまうことから生まれた言葉ですね。

ビジネスにおける現状維持バイアスの事例

冒頭で、新商品が売れない悩みに対して、「売れない商品を作ってしまったのかもしれない、市場が新商品を受け入れることに抵抗しているのかもしれない」と話しましたが、ここに係る現状維持バイアスとは何でしょうか。

新商品が売れない現状維持バイアス

新商品が売れないことに関係する現状維持バイアスには、外的要因と内的要因があります。

不景気などの外的要因

経済が活性化するためには、市場のニーズを喚起する必要があります。つまり、多くの新しいアイデアから多くの新商品を作り、それら新商品が切磋琢磨して競争をすることが望ましいのです。

ところが景気が悪化すると、そもそも新商品が売れなくなる傾向があります。これは市場心理に現状維持バイアスが働くためです。

景気が悪化すると財布の紐は固くなり、人はトライをしなくなります。既存商品を購入するか、既存商品を修理して使うことで、間に合わせようとするはずです。

価値が伝わらないなどの内的要因

あなたがどれだけ画期的な新商品を作っても、市場がその価値を理解できなければ新商品は売れません。

画期的な新商品に対して、市場心理には現状維持バイアスが働きます。

そのため、あなたの市場に対する役割は、便利になるなどの直接的なメリットを伝えることではなく、恩恵として受けられるベネフィットを伝えることです。

たとえば、お掃除ロボットのルンバは、吸引力や持ち運びやすさなど、これまでの掃除機が競っていた機能とは違う価値を提供しようとしました。

ルンバの価値は、掃除のしやすさなど掃除機の機能性ではなく、自動で掃除をしてくれることによる消費者の時間の確保です。このベネフィットが現状維持バイアスに勝っていたため、市場に受け入れられたわけです。

商品が優れていると信じる現状維持バイアス

「新商品が優れていても市場で受け入れられないのは現状維持バイアスが働いているから」という前提で話をしましたが、その考え方自体に現状維持バイアスが働いている可能性があります。

たとえば新商品開発費用に10億円かかったとして、なぜ開発当初から最後までその新商品が売れることを確信していたのか、また、確信に至る要素は何だったのかを説明できるでしょうか。

3億円支払ったとき、5億円支払ったとき、「ここまでやったんだから。」という理由で無理やり完成にこぎつけた商品だということはないでしょうか。「利益は出なくても良いから、せめて開発費10億円を取り戻したい。」と思っていないでしょうか。

売れるかどうか確信が持てなくても、商品が優れていると信じる(信じたい)気持ちで完成まで突っ走ってしまう心理が現状維持バイアスです。

本来は、売れる確信が持てなくなった時点で、もう一度検証して客観的な売れる仕組みを作るか、撤退するかの2択が必要です。決して、「ここまでやったんだから。」という気持ちだけで継続してはいけません。

売れる確信が持てなければ、それまで投資した時間とお金は諦めるべきです。このように時間や費用など取り返せないコストのことを「サンクコスト」と言います。

現状維持バイアスの影響を受けないために

ビジネスにおいては、生産者心理にも市場心理にも現状維持バイアスが働きます。

とくに生産者の立場であれば、現状維持バイアスがあることを認識しておかなければ、根底にある心理のせいで大きな損をしてしまう可能性があるわけです。

わたしたちが現状維持バイアスの影響を受けないためには、周囲の声を聞き、正しい分析をすることが必要です。

変化することのメリット・デメリット、現状維持することのメリット・デメリットを定量的に比較して、最終的にどちらの選択が正しいかを判断をしなければいけません。

これは変化することが正しく、現状維持が間違っているという意味ではありません。根拠のない変化をするよりは、メリットを考えた上での現状維持を選択する場合もあるでしょう。

つまり、どのタイミングにおいても常に冷静に、客観的に物事を考える力を養い、それをいつでも使える状態にしておかなければいけないということです。

わたしたちの生活には、現状維持バイアスが溢れています。政治にしろ、企業活動にしろ、どのような対応が正しいかは客観的に見ているとわかるものです。

それにもかかわらず、わたしたちが思っていない方向に舵が切られてしまうのは、当事者に現状維持バイアスが働いている可能性があるからです。それだけ恐ろしい心理作用だということを肝に命じておきましょう。