サンクコスト効果とは?無意識のうちに時間やお金を失う原因と対策

サンクコスト効果が起こる原因

お金を失った、時間を無駄にしたと感じる境界線

勢いで同僚にお酒を奢って今月のお小遣いが残り1万円になってしまった、明後日提出の急ぎの仕事の途中でついゲームをしてしまったなど、お金や時間の無駄遣いは誰にでもあると思います。

まっとうな社会人なら一時的に後悔はしても、引きずらないように頭を切り替えます。なぜなら、後悔しても意味がないことを知っているからです。

まさか、「どうせ残り1万円しかないし今日全部使っちゃえ!」「どうせ間に合わないから今日もゲームして過ごそー。」なんて破滅思考の人はいないと思います。

ではあなたが、お金や時間を無駄にしたと感じる境界線はどこにあるでしょう。仕事で任された大きなプロジェクトが途中で失敗だと気付いたら、最後までやり遂げることが大切だと思いますか。

わたしたちは、失敗を恐れて、無意識に時間やお金を無駄にする行動や考え方をする可能性があります。これを「サンクコスト効果」と言います。

今回のテーマ
今回は、サンクコスト効果についてよくわからない人のために、次の内容をお話します。

  • サンクコスト効果とは何か
  • サンクコスト効果が起こる原因
  • サンクコスト効果に陥らない方法

それでは早速見ていきましょう。

サンクコスト効果(埋没費用効果)とは

サンクコスト(Sunk Cost)とは、事業などに費やしたお金や時間が、事業の縮小や市場変化などによって取り戻すことができなくなったときのコストを指します。埋没費用とも呼ばれます。

そして、途中まで進んでいた事業にかかったお金や時間などをもったいないと感じてしまう心理作用を「サンクコスト効果」と言います。

Wikipediaでは、「つまらないと感じた映画を最後まで観賞し続けるべきか」「チケットを紛失した場合に再度チケットを買って観るべきか」をサンクコストの事例として挙げています。

埋没費用 – Wikipedia

Wikipediaの事例では、支払った1800円のチケット代金をもったいないと感じてつまらない映画を最後まで鑑賞したり、なくしてしまったチケット代金と再度購入したチケット代金を合わせて3600円が映画の価値だと判断する気持ちがサンクコスト効果になります。

本来は、1800円の価値がなければ映画を観ることをやめて、それ以上に有意義なことに時間を使うべきです。また、1度失った1800円の価値は脇に置いて、改めて1800円の価値がある映画かどうかを判断すべきです。

このような事例は、わたしたちの日常に溢れています。

同じように、大きな目標を掲げて始めたプロジェクトだとしても、何らかの原因で撤退を余儀なくされた場合は、撤退の判断が遅いほど資金的・時間的コストが膨らんでいきます。ところが、なかなか撤退を判断できません。

失敗を認めて、すっぱりと諦めることができないのは、いくつかの原因があります。

サンクコスト効果が起こる原因

わたしたちが失ったコストを引きずってしまうのは、心理的な原因があります。

原因1.一貫性の法則

一貫性の法則とは、人が自分で決めたことに対して一貫した行動をとり、最後までやり切りたいという心理のことです。

一見良いことに思えますが、「価値があると判断した一貫した行動」と「考える必要がない一貫した行動」はまったく違います。

人は常に考えて行動するわけではなく、半分近くは小さな習慣の積み重ねで行動しています。

デューク大学の学者が2006年に発表した論文によると、毎日の行動の、じつに40パーセント以上が、「その場の決定」ではなく「習慣」だという。

著:チャールズ・デュヒッグ 訳:渡会 圭子「習慣の力 The Power of Habit」

そのため、大きなプロジェクトであるほど各所で働く人の作業、指示する人の作業が習慣化されている恐れがあり、一貫性の法則によってやめる判断ができなくなってしまいます。

原因2.現状維持バイアス

現状維持バイアスとは、人が何かを選択をする際に、選択肢に現状維持が含まれている場合、変化によるリターンよりもリスクを嫌うことで、現状維持を選択してしまう心理的作用を言います。

つまり、人間は一貫した行動によってサンクコストが発生していると感じたとしても、現状維持バイアスによって行動を変えることに不安を感じて、現状維持を選択する場合があるということです。

掲げた目標が大きいと、その目標に向かって走る行動は一貫したものになります。そのため、大きなプロジェクトであるほど現状を変えることに抵抗を感じてしまいます。

原因3.認知的不協和

認知的不協和とは、人がある行動をとる中で、その行動に矛盾した事実や行動を損なう事象が起こったときに感じる不快感を言います。

イソップ童話に「すっぱいぶどう」という話があります。

ある日狐が、高い木に美味しそうに実ったぶどうを見つけました。狐はぶどうが食べたくて何度も飛びつきますが、ぶどうには届きません。そこで狐は、「きっとあのぶどうは酸っぱいに違いない。食べる価値がない。」と負け惜しみを言って立ち去りました。

狐はぶどうを食べたいけど、食べられない事実に直面したため不快感を感じました。そこで狐は「ぶどうをとらない」ではなく、とれない事実を正当化するために「ぶどうは酸っぱいからとる必要がない」と都合よく考えて、不快感を軽減したわけです。

同様に、もしプロジェクトの途中で採算がとれないと予想できた場合に、わたしたちは認知的不協和を感じます。その際、プロジェクトをやめるのではなく、「もしプロジェクトが失敗しても、違うものに活用できるはずだ。」と不快感を軽減して、プロジェクトを継続してしまいます。

事業でサンクコスト効果に陥らない方法

では、このようなサンクコスト効果に陥らずに大きなプロジェクトを進めるには、どう考え、どう行動すれば良いのでしょうか。

常に客観的に現状把握できる数値を設ける

もっとも大切なことは、現状を客観的に判断できる数値を複数設けておくことです。

たとえば、そのプロジェクトが新しい電子マネーを作るプロジェクトだとした場合、まず将来的にその電子マネーがどのようなポジショニングをするかを考え、目標に向かって走り出す必要があります。

その際、プロジェクト継続を考える要点は、予算や市場占有率など自分たちが掲げるものだけでなく、5年後、10年後の市場規模だったり、日本の国策として行う目標率だったり、競合の動向だったり、実際の市場の反応だったりなどの外部環境です。

背負う責任の重さを理解しておく

大きなプロジェクトほど長いスパンで行うため、責任者が背負う責任は重くなります。多くの人は、責任の重さはわかっていますが、愚弟的な責任の範疇を把握しようと思いません。

「出る前に負けること考えるバカいるかよ!」とはアントニオ猪木の名言ですが、負けたらどんな責任を負うかを知っておかなければ、いざというときに責任を回避する頭が働いてしまい、状況が悪化してしまいます。

また、大きなプロジェクトになると、関わる人が増える分責任が分散されたように感じてしまい、本来背負うべき責任の大きさが見えなくなる場合もあります。

そのため、プロジェクトが始まる前に、背負う責任の重さはしっかり理解しておきましょう。

話し合いをする基準を決めておく

前述した通り、常に客観的に現状把握できる数値を定期的に取得して、プロジェクトの継続の可否を決める判断基準を設けておかなければいけません。

ただし、失敗が明らかにできない曖昧な場合は、数値で関係者と話し合いをする基準を設けて、判断できるようにしましょう。

ここで大切なことは、「話し合いが増える=状況が悪化している」と全員が把握することです。

状況が悪化しているから話し合いをしているにもかかわらず、サンクコスト効果が働いて、「大丈夫!これからいけるって!」という慰め合いになっては意味がありません。

失敗したときの行動をあらかじめ決めておく

失敗したときにどう行動をするかは、あらかじめ決めておかなければいけません。もっともやってはいけないことは、盲目的にプロジェクトを続けて、責任者だけを交代することです。

新しく入った責任者は、同じようにプロジェクトを細く長く続けて、時期が来たらまた責任者を交代すれば良いと考えてしまうかもしれません。

これではずっとサンクコストを生み出し続けてしまいます。

サンクコストの失敗を認めるためには

サンクコスト効果に対するもっとも厄介な言葉は、「諦めなければ夢は叶う!」です。「努力は人を裏切らない!」もそうですね。

わたしたちが認識すべきことは、正しく努力をすれば夢は叶う可能性がありますし、正しい努力は人を裏切らない可能性があるということです。

つまり、物事がうまくいかないのは、成果を出す産みの苦しみの過程にいるのではなく、やり方が間違っているかもしれないと考えなければいけないわけです。

失敗を認めることが好きな人はいません。これまで積み上げたものを捨てるのは勇気がいることです。それでも、成果が出ない作業を続けることほど虚しいことはありません。

では、失敗を認めるためにはどうすれば良いのか……それは自分の失敗を受け入れる姿勢を持ち、ある程度失敗慣れするしかありません。

米カリフォルニア大学のJuliana Breines氏とSerena Chen氏の研究によると、「自分の失敗を受け入れる姿勢」を持っている人の方が目標を達成しやすいそうです。

Breines氏とChen氏の研究では、被験者を2つのグループに分け、片方のグループには高い自尊心を持って過去の失敗を振り返ってもらい、もう片方のグループには「自分の短所を受け入れる姿勢」を持って過去の失敗を振り返ってもらいました。たとえば、被験者の短所について質問する時は、それぞれのグループに次のような質問をしました。

(中略)

これまでの失敗を受け入れたグループには、自分の短所は変えられると考えた人がより多くいました。彼らは自分の悪いところを改善して、次に同じ間違いをしないように気をつける傾向が見られました。

さらに、このグループは通常よりパフォーマンスも上がっていることがわかりました。たとえば、あるテストに受からなかった被験者に再テストを受けるチャンスを与えたところ、1回目のテストの失敗を受け入れた人は、受け入れなかった人に比べて25%も長く勉強し、テストの点数も上がっていました。

潜在能力を引き出すカギは「自分の失敗を受け入れる姿勢」である | ライフハッカー[日本版]

To Succeed, Forget Self-Esteem

生きていれば、いつか大きな失敗をする日がきます。そのときに、失敗を受け入れられず、傷口を広げてしまわないよう、普段から挑戦をする癖を付けておきましょう。

挑戦に成功し続ける人はいません。何度も挑戦し、失敗し、その反省を次に活かす考え方を持つことで、サンクコスト効果に陥らない行動がとれるようにしてください。

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