新規デザイン案件の受発注で後から揉めない・失敗しない方法

打ち合わせ

新規デザイン案件で失敗する理由は

わたしは以前、フォトショップやイラストレータ、ドリームウィーバーなどをなんとか使って、WEBデザインの仕事を受けていた時代がありました。

そのため、デザイナーがクライアントから言われて思わず絶句したり、苦笑いする言葉があることはよくわかります。システム開発でも割と似たようことはあります。

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ただ、このようなお話は大なり小なりどの業界でもあることで、受注側・発注側のお互いの認識のズレから生じているものばかりです。

認識のズレは、すぐに修正できるものから、長いお付き合いの中で時間をかけて修正するものまでさまざまですが、ズレを無くすにはポイントを押さえて、確認し合うことが大切です。

とくに大切な場面は、初めての打ち合わせです。最近はクラウドソーシングで顔を見ずに受発注できるようになりましたが、依頼するデザインが複雑になるほど、お互いが1度は顔を合わせたいと思うものです。

今回のテーマ
今回は、LINE Outについてまだよくわからない人、LINE Outを検討している人のために、次の内容をお話します。

  • デザイナーがデザイン受注で失敗しないポイント
  • 企業がデザイン発注で失敗しないポイント

それでは早速見ていきましょう。

そこで今回は、デザイナーとクライアントの打ち合わせでお互いが確認し合うことや見極めるポイントについてお話したいと思います。

新規のデザイン受注で失敗しないポイント

デザイナーが案件を受注するうえで失敗しないために、以下の点を注意しましょう。

事前にクライアント情報を集める

デザイナーが依頼されたデザインを具体的にイメージするのは、打ち合わせ中が多かったりします。話の途中で、ある程度イメージを思い浮かべながら話を進めています。

ところが、クライアントの業務に知見がないと、話をしていてもイメージができません。イメージできないと、その場で話をすり合わせられないため、後から余計な時間を使ってしまいます。

そのため、クライアントの企業情報や業務情報を事前に調べて打ち合わせに臨むことで、時間のムダをなくしましょう。

過去の実績はまとめておく

新規案件の受注はお互いが、「だいじょうぶかなー。」と探り合いながら話をします。あなたがデザイナーとして自信を持っていたとしても、クライアントにはなかなか伝わりません。

そのため、過去の実績はパンフレット、名刺、ロゴ、WEBサイトなど種類別でまとめておきましょう。可能であれば、事前にWEBサイトにまとめたポートフォリオを送っておくと良いでしょう。

案件の背景を理解する

案件を正しく理解できないと、相手の意図とは違うデザインをしてしまう可能性があります。

「なぜパンフレットを作ろうと思ったんですか。」
「新しいロゴにする理由はなんですか。」
「このチラシによってどのような結果を出したいですか。」
「わたしのデザインで期待されていることはなんですか。」

などの質問で依頼の全体像をつかみ、デザイン案件が発生した意図・背景を正しく認識しましょう。

デザインの意図を正しく伝える

「どのようなテイストにしますか?」「色はどうしますか?」「使いたい写真はありますか?」などは、一見正しいデザインに導く質問に聞こえますが、デザインに理解がない人はどう答えて良いかわかりません。

色使い1つとっても、ペールトーンやダークトーン、ビビッドなど配色の事例と与える印象を理解してもらいながら、選択肢を提示して選んでもらうなど、打ち合わせに参加した人が共通認識を持てる話を展開してください。

依頼内容の線引きを明確にする

与えられた仕事がどこからどこまでなのか、依頼内容は明確に線引きしなければいけません。

WEBデザインにありがちですが、デザイン依頼だと思っていたら、実はサイト作成まで期待されていたり、WEBデザインのスライスまで依頼されていて、その後のコーダーとの連携が必要だったりなど、認識のズレで作業量が大幅に変わります。

この辺りは、案件の背景が正しく認識できていれば、「○○はどうなっているのですか?」などの質問ができるはずです。

できないことは明確に断る

できないこと、得意ではないことをできる様に振る舞う必要はありません。上記の「依頼内容の線引きを明確にする」ことができないデザイナーは、仕事ができないのではなく藪蛇を恐れているのです。

もし、線引きを明確にしたことで「そちらもお願いします。」などと言われたら、「わたしが作業をすると、専門の方よりも割高になる可能性がありますが、それでも良ければお見積りします。」と返せば良いでしょう。

リテラシーレベルを見極める

発注側の担当者がどれくらいの知識を持っているのか、どの程度まで理解しているのかは、打ち合わせ中にで見極める必要があります。

デザイナーの専門用語だけでなく、最近よく使うカタカナのビジネス用語を乱発すると、意思疎通にズレが生じて、後から揉める原因になります。

逆に、すべての言葉を簡単な意味に翻訳しながら話すと時間もかかりますし、馬鹿にされたと受け取る人もいます。見極めは難しいです……。

概算見積もりは明確にしない

打ち合わせの途中で予算を明確にするクライアントはありがたいですね。逆に、打ち合わせの途中で「いくらですかね?」と聞かれるのはとても困ります。

デザイン案件は、クライアントの要望によって金額がピンキリです。そのため、受注側はなるべく不確定要素を排除して、スッキリ見積もりを出したいと思っていますが、そうもいかない相手もいます。

その場合は、「現段階では詳細が見えていないので50-100万円ほどですが、予算はどれくらいですか?」と幅を持たせたうえで予算を聞いてください。

もし、50万円より下の予算を提示された場合は、「では要件をすべて聞いた上で、優先順位をつけてやることを決めましょう。」と話し、予算が決まっていないと言われたら、「ではもう少し要件を詰めて、概算で提示できるようにしましょう。」と返してください。

納期とその理由を聞く

納期に余裕のある仕事はそれほどありません。そのため、明確な納期を聞くことは当然として、なぜその日が納期なのか理由も聞きましょう。

何となく決められた納期なのか、他社との連携が絡んだ納期なのか、展示会などのイベントが絡んだ納期なのかで、納期の意味合いが変わってきます。

納期の理由をしっかり聞くと、「もう少し後にずらせるじゃん……。」という設定は多かったりします。

メモを議事録にして送る

まず打ち合わせの基本事項として、メモは必ずとってください。そのうえで、議事録にまとめてメールを送りましょう。誰かの発言など、メモしたこと以外も補完して送ると抜け漏れがなくなります。

送った議事録には必ず目を通してもらい、クライアントが内容を承認したことを確認してください。議事録は自分を守るだけでなく、共有認識を持つことで仕事をスムーズに進める効果があります。

目的がない打ち合わせはしない

目的がある打ち合わせは良いことですが、目的がない打ち合わせは時間の無駄です。1回打ち合わせをすると、打ち合わせ時間+往復の移動時間がかかります。さらに、打ち合わせの日時調整の時間がかかります。

デザインの打ち合わせであれば、基本的には最初の1-2回だけで良く、それ以外は会って話さなければいけない明確な目的がない限り、打ち合わせをしないようにしましょう。

もし、クライアントから打ち合わせの打診があった場合は、打ち合わせの目的とかかる時間の目安を聞き、可能であれば電話で打ち合わせができないか打診してください。

新規のデザイン発注で失敗しないポイント

新規のデザイン案件を発注するうえで失敗しないために、以下の点を注意しましょう。

何を依頼するのか要点をまとめる

何のためにデザインを依頼するかを考えずに、とりあえずデザイナーに会ってアイデアを得ようという人がいますが、このようなふわふわした状態で会っても、まともな打ち合わせができません。

何を依頼するのか、なぜこのデザイナーに任せたいのかなど、要点をまとめてから打ち合わせをしなければお互いに時間の無駄になってしまいます。

事前に過去の作品などを確認する

デザイナーと言ってもさまざまなジャンルのデザイナーがいます。よくデザイナーはイラストが描けると勘違いされますが、イラストもしっかり描けるデザイナーは貴重です。

事前にポートフォリオなどを見せてもらい、どのようなデザインができるのか、またどのようなクライアントと仕事をしているのかを確認して、依頼内容とデザイナーのスキルが合っていなければ、話を振ることも控えた方が良いでしょう。

アイスブレイクで人間性を見極める

アイスブレイクで、なぜデザイナーをしているのか、これまでに手がけたデザインで面白かったものは何かなどを聞いてみましょう。

デザイナーは基本的に、内にこもって自分と対話をする人が多いので、デザインに対するこだわりや仕事への熱意など、人間性を見極める一端になります。

案件の背景を説明する

案件を依頼する際に、背景をすっ飛ばしてチラシやWEBデザインを依頼してはいけません。同じ住宅案内チラシでも、既存商圏に対するチラシと新規商圏に対するチラシは、見せ方や意味合いが大きく変わるはずです。

また、デザインに何を期待しているのか、ターゲットのデモグラフィック(サイコグラフィックも)など、デザイナーのイメージが膨らむように案件のストーリーを説明しましょう。可能であれば、レジュメを打ち合わせ前に送って目を通してもらいましょう。

依頼する範囲を明確にする

デザイナーに依頼する範囲を明確にしましょう。もし明確に決まっていなければ、”あくまでも現段階”という前置きをして、以下のような概略図を用いて話をするとお互いに齟齬がありません。もちろん、プロジェクトが大きくなるほど細かい組織図が必要になります。

仕事の役割

納期を明確に伝える

納期が決まっていれば月日を伝えて、納品可能か確認してください。また、納期が決まっていない案件でも、明確な納期を設定して、デザイナーに伝えてください。

そのうえで、期限の妥当性、バッファが取れるかどうかも確認しましょう。

全体スケジュールを出してもらう

他社との連携が必要な案件を依頼する場合は、スケジュールのすり合わせをお願いしたうえで、全体スケジュールを出してもらいましょう。

概算見積もりを要求する

社内稟議のために概算見積もりが必要だということはわかりますが、数字が必要な場合は、できるだけデザイナーの要望にしたがって詳細まで仕様を詰めてください。

また、予算が決まっている場合は、ある程度の数字を提示して、どこまでのことができるかを考えてもらいましょう。早く見積もりが欲しいのであれば、自分の時間は惜しまずに使ってください。

その方が結果的に全体の時間が短縮でき、お互いの意図がずれることも少なくなります。

何をしてもトラブルが起こることはある

よくデザイナーの仕事で、「爆弾案件」「炎上案件」などと揶揄される案件があります。要は、クライアントが無理なことを言う案件全般のことを指しています。

ただ、冒頭でお話した通り、これはお互いの意思疎通ができていないことが理由で起きているものばかりです。

どちらの立場も経験しているわたしからすれば、無理なことを言うクライアントと同じくらい、プライドが高くていっしょに仕事をしたくないデザイナーもいます。

デザインの仕事は、ゼロから何かを生み出す仕事です。そのため、作るものやかけた時間によって金額が異なります。もしかしたら、シチュエーションによって値付けを変えている人もいるかも知れません。

この部分の価値観は見積もりを作るデザイナー本人にしかわかりません。作業内容による金額の取り決めが明確でないことが、クライアントの曖昧な発注内容になったり、両者の認識のズレを作る可能性があることも知っておきましょう。

もちろん、どれだけ認識を共有する話し合いをしても、トラブルが起こることはあります。

トラブルが起きるのは嫌なことですが、お互い(ある程度の)本音をさらけ出す良い機会でもあります。両者にとって良い仕事ができるように、自分の意見を主張することを忘れないでください。

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