新規デザイン案件の受発注で後から揉めない・失敗しない方法

打ち合わせ

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新規デザイン案件で失敗する理由は

昔々15年以上前の話ですが、フォトショップやイラストレータ、ドリームウィーバーなどをなんとか使って、WEBデザインの仕事を受けていた時代がありました。

そのため、デザイナーがクライアントから言われて思わず絶句したり、苦笑いするような言葉があることはよくわかります。システム開発の現場でも割と似たようことはあります。

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ただ、このようなお話は大なり小なりどの業界でもあることで、受注側・発注側のお互いの認識のズレから生じているものばかりです。

認識のズレは、すぐに修正できるものから、長いお付き合いの中で時間をかけて修正するものまでさまざまですが、ズレを無くすためにはお互いにポイントを押さえて、恐れずに確認し合うことが大切です。

とくに大切な場面は、初めての打ち合わせです。最近はクラウドソーシングで顔を見ずに受発注ができるようになりましたが、依頼するデザインが複雑になるほど、お互いが1度は顔を合わせたいと思うものです。

そこで今回は、デザイナーとクライアントの打ち合わせでお互いが確認し合うことや見極めるポイントについてお話したいと思います。

新規のデザイン受注で失敗しないポイント

デザイナーが案件を受注するうえで失敗しないために、以下の点を注意しましょう。

事前にクライアント情報を集める

デザイナーが依頼されたデザインを具体的にイメージするのは、打ち合わせ中が多かったりします。話をしている途中で、ある程度イメージを思い浮かべながら話を進めます。

ところが、クライアントの業務に知見がないと、話をしていてもイメージができません。そのため、クライアントの企業情報や業務情報を事前に調べて打ち合わせに臨むことで、スムーズな仕事のスタートを切れるようにしましょう。

過去の実績はまとめておく

新規案件を受注するのは緊張するものですが、それは発注するクライアントも同じです。あなたがデザイナーとして自信を持っていたとしても、クライアントにはなかなか伝わりません。

そのため、過去の実績はパンフレット、名刺、ロゴ、WEBサイトなど種類別でまとめておきましょう。可能であれば、事前にWEBサイトにまとめたポートフォリオを送っておくと良いでしょう。

案件の背景を理解する

案件を正しく理解できないと、相手の意図とは違うデザインをしてしまう可能性があります。

「なぜパンフレットを作ろうと思ったんですか。」
「新しいロゴにする理由はなんですか。」
「このチラシによってどのような結果を出したいですか。」
「わたしのデザインで期待されていることはなんですか。」

などの質問によって依頼の全体像をつかみ、デザイン案件が発生した意図・背景を正しく認識しましょう。

デザインの意図を正しく伝える

「どのようなテイストにしますか?」「色はどうしますか?」「使いたい写真はありますか?」などは、一見正しいデザインに導く質問のように聞こえますが、デザインに理解がない人にとっては、どう答えて良いかわかりません。

色使い1つとっても、ペールトーンやダークトーン、ビビッドなど配色の事例と与える印象を理解してもらいながら、選択肢を提示して選んでもらうなど、打ち合わせに参加した人が共通認識を持てるような話を展開してください。

線引きを明確にする

与えられた仕事がどこからどこまでなのか、その領分は明確に線引きしなければいけません。

WEBデザインにありがちですが、デザイン依頼だと思っていたら、実はサイト作成まで期待されていたり、WEBデザインのスライスまで依頼されていて、その後のコーダーとの連携が必要だったりなど、認識のズレで作業量が大幅に変わってしまいます。

この辺りは、案件の背景が正しく認識できていれば、「○○はどうなっているのですか?」などの質問ができるはずです。

できないことは明確に断る

できないこと、得意ではないことに対して、さもできる様に振る舞う必要はありません。上記の「線引きを明確にする」ことができないデザイナーは、仕事ができないのではなく、藪蛇になることを恐れているのです。

もし、線引きを明確にしたことで「そちらもお願いします。」などと言われたら、「わたしが作業をすると、専門の方よりも割高になる可能性がありますが、それでも良ければお見積します。」と返せば良いでしょう。

リテラシーレベルを見極める

発注側の担当者がどれくらいの知識を持っているのか、どの程度まで話を理解しているのかは、打ち合わせの中で見極める必要があります。

デザイナーの専門用語だけでなく、最近よく使うカタカナのビジネス用語を乱発していると、意思疎通にズレが生じてしまい、後から揉める原因になりかねません。

逆に、すべての言葉を簡易な意味に翻訳しながら話すと時間もかかりますし、馬鹿にされたと受け取る人もいます。

概算見積もりは明確にしない

打ち合わせの途中で予算を話してくれるクライアントはとてもありがたいですね。逆に、打ち合わせの途中で「いくらですかね?」と聞かれるのはとても困ります。

デザイン案件は、クライアントの要望によって金額がピンキリです。そのため、受注側としてはなるべく不確定要素を排除して、スッキリと見積もりを出したいと思っていますが、そうもいかない相手もいます。

その場合は、「現段階では詳細が見えていないので50-100万円ほどですが、予算はどれくらいですか?」と幅を持たせたうえで予算を聞いてください。

もし、50万円より下の予算を提示された場合は、「では要件をすべて聞いた上で、優先順位をつけてやることを決めましょう。」と話し、予算が決まっていないと言われたら、「ではもう少し要件を詰めて、概算で提示できるようにしましょう。」と返してください。

納期とその理由を聞く

納期に余裕のある仕事はそれほどありません。そのため、明確な納期を聞くことは当然として、なぜその日が納期なのか理由も聞きましょう。

何となく決められた納期なのか、他社との連携が絡んだ納期なのか、展示会などのイベントが絡んだ納期なのかで、納期の意味合いも大きく変わってきます。

メモを議事録にして送る

まず打ち合わせの基本事項として、メモは必ずとってください。そのうえで、議事録としてまとめてメールを送りましょう。誰かの発言など、メモしたこと以外も補完して送ると抜け漏れがなくなります。

送った議事録には必ず目を通してもらい、クライアントが内容を承認したことを確認してください。議事録は自分を守るだけでなく、共有認識を持つことで仕事をスムーズに進める効果があります。

目的がない打ち合わせはしない

目的がある打ち合わせは良いことですが、目的がない打ち合わせは時間の無駄です。1回打ち合わせをすると、打ち合わせ時間+往復の移動時間がかかります。さらに、打ち合わせの日時調整の時間がかかります。

デザインの打ち合わせであれば、基本的には最初の1-2回だけで良く、それ以外は会って話さなければいけない明確な目的がない限り、打ち合わせをしないようにしましょう。

もし、クライアントから打ち合わせの打診があった場合は、打ち合わせの目的とかかる時間の目安を聞いてください。

新規のデザイン発注で失敗しないポイント

新規のデザイン案件を発注するうえで失敗しないために、以下の点を注意しましょう。

何を依頼するのか要点をまとめる

何のためにデザインを依頼するかを考えずに、とりあえずデザイナーに会ってアイデアを得ようという人がいますが、このようなふわふわした状態で会っても、まともな打ち合わせができません。

何を依頼するのか、なぜこのデザイナーに任せたいのかなど、要点をまとめてから打ち合わせをしなければお互いに時間の無駄になってしまいます。

事前に過去の作品などを確認する

デザイナーと言ってもさまざまなジャンルのデザイナーがいます。よくデザイナーはイラストが描けると勘違いされますが、イラストもしっかり描けるデザイナーは貴重です。

事前にポートフォリオなどを見せてもらい、どのようなデザインができるのか、またどのようなクライアントと仕事をしているのかを確認して、依頼内容とデザイナーのスキルが合っていなければ、話を振ることも控えた方が良いでしょう。

アイスブレイクで人間性を見極める

アイスブレイクで、なぜデザイナーをしているのか、これまでに手がけたデザインで面白かったものは何かなどを聞いてみましょう。

デザイナーは基本的に、内にこもって自分と対話をする人が多いので、デザインに対するこだわりや仕事への熱意など、人間性を見極める一端になります。

案件の背景を説明する

案件を依頼する際に、背景をすっ飛ばしてチラシやWEBデザインを依頼してはいけません。同じ住宅案内チラシでも、既存商圏に対するチラシと新規商圏に対するチラシは、見せ方や意味合いが大きく変わるはずです。

また、デザインに何を期待しているのか、ターゲットのデモグラフィック(サイコグラフィックも)など、デザイナーのイメージが膨らむように案件のストーリーを説明しましょう。可能であれば、レジュメを打ち合わせ前に送って目を通してもらいましょう。

依頼する範囲を明確にする

デザイナーに依頼する範囲を明確にしましょう。もし明確に決まっていなければ、”あくまでも現段階”という前置きをして、以下のような概略図を用いて話をするとお互いに齟齬がありません。もちろん、プロジェクトが大きくなるほど細かい組織図が必要になります。

仕事の役割

納期を明確に伝える

納期が決まっていれば月日を伝えて、納品可能かを確認してください。また、納期が決まっていない案件でも、明確な納期を設定して、デザイナーに伝えてください。

そのうえで、期限の妥当性、バッファが取れるかどうかも確認しましょう。

全体スケジュールを出してもらう

他社との連携が必要な場合は、スケジュールのすり合わせをお願いしたうえで、全体スケジュールを出してもらいましょう。

概算見積もりを要求する

社内稟議のために概算見積もりが必要だということはわかりますが、数字が必要な場合は、できるだけデザイナーの要望に従って詳細まで仕様を詰めてください。

また、予算が決まっている場合は、ある程度の数字を提示して、どこまでのことができるかを考えてもらいましょう。早く見積もりが欲しいのであれば、自分の時間は惜しまずに使ってください。

何をしてもトラブルが起こることはある

よくデザイナーの仕事で、「爆弾案件」「炎上案件」などと揶揄される案件があります。要は、クライアントが無理なことを言う案件全般のことを指しています。

ただ、冒頭でお話した通り、これはお互いの意思疎通ができていないことが理由で起きているものばかりです。

どちらの立場も経験しているわたしからすれば、無理なことを言うクライアントと同じくらい、プライドが高くていっしょに仕事をしたくないデザイナーもいます。

デザインの仕事は、ゼロから何かを生み出す仕事です。そのため、作るものやかけた時間によって金額が異なります。もしかしたら、シチュエーションによって値付けを変えている人もいるかも知れません。

この部分の価値観は見積もりを作るデザイナー本人にしかわかりません。作業内容による金額の取り決めが明確でないことが、クライアントの曖昧な発注内容になったり、両者の認識のズレを作る可能性があることも知っておきましょう。

もちろん、どれだけ認識を共有する話し合いをしても、トラブルが起こることはあります。

トラブルが起きるのは嫌なことですが、お互い(ある程度の)本音をさらけ出す良い機会でもあります。両者にとって良い仕事ができるように、自分の意見を主張することを忘れないでください。