プロダクトライフサイクルとは?導入・成長・成熟・衰退期の製品事例

プロダクトライフサイクルとは

マーケターなら市場の製品寿命を知るべき

プロダクトライフサイクルという言葉を知っていますか。これは、製品(プロダクト)の寿命の周期(ライフサイクル)を表す言葉です。

企業のマーケターや経営層なら知っていて当然の言葉ですね。

なぜなら、企業はプロダクトライフサイクルのステージに応じて、費用・売上・利益を予測して、価格を決定したり、マーケティング戦略を立案しているからです。

では、プロダクトライフサイクルはどのようなサイクルを描き、どのような特徴を持つものなのでしょうか。

今回のテーマ
今回は、プロダクトライフサイクルについてよくわからない人のために、次の内容をお話します。

  • プロダクトライフサイクルとは何か
  • 導入期・成長期・成熟期・衰退期の製品事例
  • プロダクトライフサイクルとイノベーター理論とキャズム理論を複合して考える

それでは早速見ていきましょう。

プロダクトライフサイクル(製品ライフサイクル)とは

プロダクトライフサイクル(PLC|Product Life Cycle)とは、製品開発から市場に製品が投入されて、衰退していくまでの期間を売上のグラフ、利益のグラフで表したものです。「製品ライフサイクル」とも呼ばれます。

プロダクトライフサイクル

Product Life Cycle Stages – Managing the Product Life Cycle

プロダクトライフサイクルには、製品開発期(Product development)、導入期(Introduction)、成長期(Growth)、成熟期(Maturity)、衰退期(Decline)という5つの時期があります。

プロダクトライフサイクルとは
プロダクトライフサイクルとは、以下の5つの時期で構成される製品の売上と利益のグラフのこと。製品開発期を除いて、4つであらわす場合もある。

  • 製品開発期(Product development)
  • 導入期(Introduction)
  • 成長期(Growth)
  • 成熟期(Maturity)
  • 衰退期(Decline)

製品やサービスによってプロダクトライフサイクルの形は変わりますが、一般的にはこの山なりのS字グラフを思い浮かべてください。

プロダクトライフサイクルの各時期の特徴

製品開発期(Product development)

Product-Life-Cycle-製品開発期

製品開発期とは、企業が新しい製品開発を行う時期のことです。

企業が新しい製品アイデアを思いつき、製品の開発が始まることで、製品開発期がスタートします。当然、製品開発中の売上(Sales)はゼロで、この期間の会社の投資コスト(Profits)は増加します。

導入期(Introduction)

Product-Life-Cycle-導入期

導入期とは、新しい製品が市場に投入され、製品の初期アナウンスを行う時期のことです。

初期アナウンスは、主に製品の使用方法や既存製品と比較した優位性の啓蒙を行い、最初の需要を作ることが目的になります。

新製品の理想はS字のライフサイクルを描くことですが、もちろん導入期では市場の需要の有無はわかりません。ただし、このような状態でもアナウンスコスト(販促コスト)は増していきます。

成長期(Growth)

Product-Life-Cycle-成長期

成長期とは、市場で製品の需要が認められたことで、売上と利益が大きく成長する時期のことです。

コストに対して利益が見合う時期なので、うまく拡大すれば累損(累積損失)が解消することも考えられます。ただし、市場のニーズが高まると競合他社も増えるため、より大きなベネフィットを消費者に示す必要があります。

また、需要が拡大するため、事業運営に粗が見え始める時期でもあります。ここを引き締められないと、せっかくの成長期に運用面の問題でつまづいてしまいます(たとえばコインチェックなど)。

成熟期(Maturity)

Product-Life-Cycle-成熟期

成熟期とは、市場に製品が行き渡り、製品の利用率がピークに達する時期のことです。

この時期には少数の企業が市場シェアの大部分を獲得しているため、製品はコモディティ化し、市場にも製品の飽きが生まれます。

そのため、製品の創意工夫だけでなく、付随サービスを多角化したり、低価格戦略に力を入れなければいけません。この時期までに獲得した市場シェアによって、企業のポジショニング戦略が決まります。

市場における4つの戦略ポジション
リーダー企業|業界の最大手企業
チャレンジャー企業|リーダーを追いかける2、3番手企業
フォロワー企業|リーダー、チャレンジャーに追従する企業
ニッチャー企業|別角度で専門的な市場を形成する企業

衰退期(Decline)

Product-Life-Cycle-衰退期

衰退期とは、製品がレガシー化し、より新しい製品に取って代わられる時期のことです。

製品は市場ニーズが低下して、売上、利益ともに減少していきます。企業としては、製品が衰退期に入る前に新しい製品開発に着手するか、市場撤退するかを決定しなければいけません。

既存製品は、これ以上の改良やサービス提供をする必要がなくなるため、投資コストはいらなくなりますが、同時に利益も縮小していきます。

導入期・成長期・成熟期・衰退期の製品事例

では、現時点で導入期・成長期・成熟期・衰退期にある具体的な製品とはどのようなものがあるでしょうか。

導入期の製品事例

本格的な自動運転車(じどううんてんしゃ)の導入は、法整備も必要になるため、2030年ごろに実用化されると言われています。

とは言え、自動運転車にはレベルがあります。現段階では安全運転支援システム(自動ブレーキ)がある程度運用されていて、これも自動運転機能の一部になります。

自動運転タクシーサービスの公道営業実証実験も始まっているため、そういう意味では自動運転車は現在導入期に当たります。

成長期の製品事例

現在成長期にあるのは、「Amazon Fire TV」「Chromecast」「Apple TV」などのメディアストリーミング端末を利用したスマートテレビです。

最新情報をキャッチアップしている層には当たり前の製品ですが、市場としてはまだこれからのコンテンツです。

ちなみに、Amazon Fire TVのユーザーは市場の3割を占めていて、世界で3400万人だそうです。つまり、スマートテレビのユーザーは現時点で1億人前後だと予想できます。

アマゾンのFire TVのユーザーが3400万人に達した | TechCrunch Japan

成熟期の製品事例

成熟期の製品の代表は、スマートフォンでしょう。iPhoneが登場してまだ15年も経っていませんが、先進国と新興国を合わせた27カ国の携帯電話保有率は93%、スマートフォン保有率は76%に上ります。

携帯電話所有状況

世界主要国のスマートフォン普及状況をグラフ化してみる(最新) – ガベージニュース

そろそろ、スマートフォンに代わる新しい媒体が登場しても良い時期ですね。期待も込めて。

衰退期の製品事例

現在衰退期にあるのは、DVDプレーヤーでしょう。「え?まだまだ現役じゃん。」と思うかもしれませんが、スマートテレビがどんどん拡大していますし、ハードディスク機器も世の中に溢れています。

DVDなどのソフトが必要なDVDプレーヤーは、もう確実に衰退期に入っているため、DVDを扱う業界は斜陽業界だと考えて良いと思います。

特別なプロダクトライフサイクル

冒頭で「製品やサービスによってライフサイクルの形は変わりますが~~」と話しましたが、すべての製品やサービスがきれいなプロダクトライフサイクルを描くわけではありません。

以下のように特徴的なライフサイクルをたどる製品やサービスがあります。

Product Life Cycle Stages – Managing the Product Life Cycle

スタイル分野

Product-Life-Cycle-スタイル

スタイルとは、大きな流行に左右されずに、ライフスタイルとして製品寿命が長く続くものです。

たとえば、フォーマルスーツは細部に流行り廃りはあっても、長く続く伝統的なスタイルですし、住宅も形や機能が大きく変わることはありません。

ファッション分野

Product-Life-Cycle-ファッション

ファッションとは、通常のライフサイクルのように市場に浸透し、ある程度のニーズを満たすと代替品にとって変わられるものです。

たとえば、同じ服装でも先ほどのフォーマルスーツと違って、通常のファッションは流行りによって代替品が登場することで、既存の服は市場からぱったりなくなってしまいます。

最近では、スマホアプリやSNSなどもこのプロダクトライフサイクルを描くものが多いですね。

流行(ファッド)分野

Product-Life-Cycle-流行

ファッドとは、急激に市場ニーズが拡大し、その熱が冷めるように急激に市場が縮小してしまうものです。

通常のプロダクトライフサイクルの流れ以上に早く成長しますが、生活に必要性を感じない嗜好品やブランド品などは、この曲線を描きやすくなります。

このように急速に市場ニーズがなくなってしまうのは、キャズム理論で言うところの「キャズムを超えられなかった」という現象で、とくに珍しいものではありません。

プロダクトライフサイクルとイノベーター理論とキャズム理論

さて、プロダクトライフサイクルを考えるうえで大切なのは、イノベーター理論とキャズム理論を合わせて理解することです。

イノベーター理論とは、新しいサービスが市場に普及する様子(割合)を5段階に分けて説明する理論のことで、キャズム理論とは、イノベーター理論で分けた5段階の間、とくにアーリーアダプターとアーリーマジョリティーの間に大きな溝(キャズム)があることを説明した理論のことです。

もちろん、すべての製品やサービスがプロダクトライフサイクル通りの曲線を描くわけではありませんが、製品が拡大するには市場の広がり方にある程度の規則性があり、売上や利益もそれに追随します。

そのため、市場ニーズを高めるマーケティングとマネージメントも、この規則性をある程度把握することで、過去の事例を真似て対処することができます。

このプロダクトライフサイクルの考え方は、とても一般的なフレームワークであり、古い・新しいという概念で考えるものではありません。

まず、新しい製品を市場に投入する前には、必ずプロダクトライフサイクルの考え方を押さえたうえで、自社製品の特徴を加味したマーケティングを行うようにしましょう。

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