日本より世界が先に知るかも ビールKAGUAのブランディング

日本発世界に通用するクラフトビール「KAGUA」

先日、初めて「KAGUA(馨和)」というビールを飲みました。「KAGUA(馨和)」は、キリンでもアサヒでもサッポロでもサントリーでも、ましてやオリオンでもありません。

読み方は「かぐあ」です。

KAGUA(馨和)」は「日本クラフトビール」が販売している、オリジナルブランドのビールのことです。「日本クラフトビール」は、2011年9月に設立されたビール業界のベンチャー企業です。

この会社が2012年3月から販売しているというビールが、この「KAGUA(馨和)」です。「KAGUA(馨和)」のことを知らない方でも、地ビールと言うとわかりやすいと思いますが、今はクラフトビールと言うようです。

で、この「KAGUA(馨和)」ですが、なぜ話題として取り上げたかというと、徹底的なブランド戦略により、日本発世界で通用するクラフトビールになり得るポテンシャルを秘めているからです。

KAGUA(馨和)」の背景とポテンシャルを見ていきます。

KAGUAの背景

普段私達が飲んでいるビールは、ビールの1つの種類でしかありません。モルツを飲もうが、スーパードライを飲もうが、エビスを飲もうが、「ピルスナー」という種類のビールを飲んでいます。

ところが世界では、さまざまなビールが飲まれています。その種類は「ピルスナー」を含めて、100種類以上と言われています。代表的なものは「ピルスナー」「ペールエール」「IPA」「ヴァイツェン」「フルーツビール」「スタウト」「バーレーワイン」の7種です。
参照:クラフトビール東京「クラフトビール (Craft Beer) とは

なぜ、日本において「ピルスナー」しか飲まれていないか、1番の理由は癖が強くないためです。万人が飲みやすいビールとして、昔から「ピルスナー」が愛飲されてきました。

ところが欧米では、クラフトビールのシェアはビール市場全体の10%にも達しています。

ここに目を付けたのが、代表を務める山田氏です。山田氏曰く、「日本のクラフトビール市場は、年率10%程度というとんでもないペースで伸びている」と。

日本酒や焼酎、ワイン等が爆発的に伸びた背景は私も知っていますが、これがクラフトビールにも起こり得る、今はその直前にあたる、とのこと。

KAGUA(馨和)」のコンセプトは「和食に合うビール」だそうで、確かに、日本酒やワインは料理に合わせて種類を増やしていますが、料理に合わせたビールは聞いたことがありません。

昨今の和食ブームの盛り上がり、東京オリンピックによる後押し、と今後一層、世界中で和食が注目されることはわかっていますので、市場としての期待感は何となくわかる気がします。

KAGUAのブランディング

KAGUA(馨和)」は「和食に合うビール」という発想からスタートしているだけに、和のテイストにこだわったブランディングを行っています。

「KAGUA」の2種の商品ラインナップを見ても、そのこだわりがわかります。

小麦を使った淡色上面発酵の「Blanc(ブラン)」

kagua_ブラン

外観:
非常に淡く、やや白濁している
キメが細かくクリーミーな泡立ち

アロマ:
イーストによる華やかなエステル香とフレッシュな柚子の香りが調和
ほのかな山椒のアロマが引き締める

フレーバー:
モルト・ホップのフレーバーは極めて穏やかなレベル
甘み・苦みともに控えめで、ドライなフレーバー
ほのかな酸味と山椒由来のスパイシーさが味の奥行きを形成する

ボディ:
しっかりとしたフルボディ
炭酸のレベルは低く、瓶内熟成により作られた気泡の細かいナチュラルカーボネーションが喉を優しく刺激する


ロースト麦芽を使った濃色上面発酵の「Rouge(ルージュ)」

kagua_ルージュ

外観:
赤みがかった濃い銅色
クリーミーで非常に豊かな泡立ち、泡持ちも極めて良い

アロマ:
スパイシーな山椒のアロマと香ばしいモルトアロマが高いレベルでバランスする

フレーバー:
モルトフレーバーとホップの苦味はいずれも高いレベルで程よくバランスしている
爽やかでスパイシーなアフターテイスト

ボディ:
かなり強いアルコール感を伴ったフルボディ
炭酸のレベルは低く、瓶内熟成により作られた気泡の細かいナチュラルカーボネーションが喉を優しく刺激する

と、私がこれまで飲んできたビールとはまったく違います。それぞれ、柚子、山椒が効いていて、確かに和食に合います。簡単に言うと、「ブラン」がすっきり、「ルージュ」が芳醇な飲みくちで、白ワインと赤ワインを意識して作っている意味もわかります。

次にデザインです。

見てわかる通り、「KAGUA(馨和)」というネーミング、ロゴデザインに和のテイストを取り入れています。

ただし、飲み方はグラスを推薦しています。

これは、もちろん香りを楽しんでもらいたいということもあるのでしょうが、明らかに普通の和食とは違った特別感と、さらには海外展開を睨んでの要素もあることは想像できます。

最後にターゲットです。

ターゲットは確実にハイエンドクラスです。ミシュラン3つ星の「銀座小十」、同じく2つ星の「とよだ」、1つ星の「細川」、箱根の名店「強羅花壇」、香港のインターコンチネンタルホテル内、和食の「NOBU」、ザ・ペニンシュラのフレンチ「フェリックス」など、多くの有名店を押さえています。

価格は生産体制にもよりますが、ビールと考えるとやはりお高めです。お店で飲むと、1,000円程度になります。

Amazonでも買えますが330ml×6本セットで3,780円也。

kagua_amazon

和食、特に上に挙げた高級割烹・懐石等は、通常の居酒屋とは明らかに客層が違っています。「KAGUA」のブランディングとしては、特別な場所で、特別な時に、という演出をしたいのでしょう。

KAGUAが見据える世界展開

このように、「KAGUA(馨和)」のブランディングを見ていくと、日本よりも世界にターゲットを置いている気がしてなりません。

先述した通り海外への展開はとても早く、香港、シンガポール、タイの高級ホテルレストランやハイエンドクラスの飲食店にはすでに納品されています。
参考:
【Press Release】「馨和 KAGUA」、タイでの販売を開始

さらに、2013年12月には、ANAの国際線ファーストクラスでも提供されています。

国際線ファーストクラスでの、“クラフトビール”の採用は非常に珍しい事例で、「馨和 KAGUA」の持つ「和」の雰囲気と、他にはない豊かな香りと味わいが、ファーストクラスの上質な空間に相応しいと評価されました。提供期間は2013年12月〜2014年2月末日の予定です。
参照:
【Press Release】「馨和 KAGUA」 ANA国際線ファーストクラスのドリンクに採用

国際線というところがポイントですね。

このように、「KAGUA(馨和)」は「ハイエンドクラスに対する和食に合う飲料」としての立ち位置を早々と海外に認識させたいという思いが強く、現在のところ、それは順調に動いているように見えます。

ビールKAGUAのブランディング まとめ

和食ブームと元々ある世界のクラフトビールの市場性という理由で、世界展開へのブランディング、足がかりは着々と進んでいるようです。もしかすると、日本でメジャーになる前に、世界でメジャーになる方が早いかもしれません。

今のところ知る人ぞ知るビールなのですが、早いうちに飲んでおくと、ビール通になって自慢できるかもしれませんよ。

KAGUA(馨和)が飲めるお店
KAGUA(馨和)が買えるお店

※「馨和 KAGUA」は、日本の酒税法上では発泡酒に分類されます。そのため、日本ではビールと表記することができないようです。

日本クラフトビール協力のアンケとはこちらからどうぞ。「和食に合うお酒の調査 年代により好みのお酒が分かれる

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