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ライフネット生命が行ったドラゴンボールに関する調査とは
おもしろいマーケティング手法で話題を作っているライフネット生命が、2013年3月に行った市場調査「ドラゴンボールに関する調査」を、もう一度振り返ってみましょう。
調査内容は以下の6項目です。
ドラゴンボール作品のどんなところに魅力を感じる?
「ドラゴンボールZ 神と神」を観たいと思う?
ドラゴンボール作品内に登場する能力・アイテムの中で、欲しいものは?
ドラゴンボールを7つ集めて、どんな願いも1つだけ叶うとしたら、何をお願いする?
生命保険に入った方が良いと思うキャラクターは?
この時期はちょうど劇場版ドラゴンボール公開前。
ドラゴンボールとのタイアップによるプロモーション戦略の一環として行われたマーケティングリサーチになっています。
ライフネット生命はネット専業であるため、契約者の平均年齢が比較的若く、36.7歳。内訳も30代が50%、20代が24%、合わせて20-30代で74%とのこと。
また、岩瀬大輔氏は同ブログ内でこのようにも語っています。
もちろん、生命保険に関する親しみやすさと関心を少しでも高められれば尚ベター。アンケートはウェブ調査会社に依頼、質問の設定と解説のライティングは社内でやっているので、費用は極めて少額で済む。
同業他社の顧客層がなかなか若返りを図れない中、ライフネット生命は自分たちの顧客層であれば認知度を上げるだけで契約者を獲得できる、と予測してのプロモーションを仕掛けていると言えます。
今回のライフネット生命の市場調査の方法は、プロモーションに落とし込める4つのポイントがあります。
1.自社サービスに対して明確なターゲットを持っている
2.コラボレーション要素が自社サービスをわかりやすく説明すること(興味を持ってもらうこと)に寄与している
3.市場調査結果はコラボレーションとの相乗効果を狙って、最初から公開する前提で設計されている
4.市場調査結果をコンテンツにすることで、バズが期待できる内容にしている
以上4つのポイントをしっかりと押さえているため、ライフネット生命の市場調査はプロモーションとして効果的な方法になったと言えます。
では、具体的に紹介していきましょう。
1.自社サービスに対して明確なターゲットを持っている
前述しましたが、「ライフネット生命はネット専業であるため、契約者の平均年齢が比較的若く、36.7歳。内訳も30代が50%、20代が24%、合わせて20-30代で74%」というターゲットです。
これまで生命保険に興味関心が薄かった層をターゲットにすることで、生命保険会社として新しい顧客を取り組む狙いです。
20代-30代が中心であるため、ドラゴンボールを題材にした市場調査とその結果によるプロモーションというこれまでなかったアプローチ手法を取ることができます。
2.コラボレーション要素が自社サービスをわかりやすく説明すること(興味を持ってもらうこと)に寄与している
リサーチの中身ですが、生命保険と関係した作りになっており、アンケート内容はおおむね理にかなっています。
たとえば、
1位は「孫悟空」(35.1%)、2位は「クリリン」(21.2%)、3位は「ヤムチャ」(12.4%)
ちなみに、孫悟空さんがライフネット生命の死亡保険「かぞくへの保険」に加入する場合、チチさんと結婚し第一子となる孫悟飯さんを出産した当時(20歳と想定)では、月額1,092円となります。(※保険金額1,000万円、保険期間10年)
↑このような説明もさらりと入れており、保険営業を聞いたことがある人は「あー、なるほどね。」となります。
3.市場調査結果はコラボレーションとの相乗効果を狙って、最初から公開する前提で設計されている
効果的なプロモーションを行うために、相乗効果を狙う方法は非常に効果的です。
たとえば、今回ライフネット生命がかけたコストは以下のものが考えられます。
・モバイルリサーチ料金
・コラボレーションライツ料金
・内部でのアンケート設計作業
・アンケート結果のライティング作業
モバイルリサーチ料金は、1000サンプルで行っていますので20万-30万円前後と予想。
コラボレーションライツは、正直予測がつかないのですが、劇場版ドラゴンボールに合わせただけであれば0かもしれません。
内部でのアンケート設計作業やアンケート結果のライティング作業は、慣れていない方と考えて4日とおきます。
というわけで、外部コストはモバイルリサーチ料金のみということになります。効果を数字に表すのは非常に難しいですが、目安としてはこのようになります。
Google検索結果「ライフネット生命 ドラゴンボール」
さまざまな、ニュースサイトやブログで取り上げられ、Twitterでつぶやかれ、いいね!され、はてぶされ、そして1年近く経った今でも、コンテンツとして残り続けています。
4.市場調査結果をコンテンツにすることで、バズが期待できる内容にしている
単純なドラゴンボールに関するアンケートではなく、ドラゴンボールキャラと生命保険を掛け合わせることで、調査結果をコンテンツに落とし込んだ時に話題を呼ぶように工夫されています。
そのため、下記のようなツッコミもたくさん期待できたと、岩瀬大輔氏もブログに記載しています。
さて、今回のリリース、Twitter では(想定通りw)たくさんの良ツッコミを頂いている:
・ 職業の想定は無職とか危険作業従事者なのでしょうか?( ̄▽ ̄)
・ 既往症で死亡歴ありとか、保険会社に引き受け拒否されそうな三人ですね。ガン保険なら大歓迎でしょうけど。
・ 職業で加入を制限されたり保険額減額されたりするのには該当してないんでしょうか>孫悟空
・ ライフネット生命は地求人でなくても加入できるんでしょうか
・ ヤムチャの場合何度も死んじゃってるわけですが、掛け金はやはり高くなっちゃうのでしょうか?
・ ドラゴンボールで生き返ったら保険会社が支払った死亡保険金はどうなるんでしょう。。。?
・ あとはナメック星や界王星での死亡の場合は保険適用なるかなどもw すみませんくだらなくてw
まさしく、想定通りw、なんでしょうね。このようなツッコミをしたくなる気持ちはわかります。
認知度を上げるためにお金はかかるのか?
多くの商品、サービスに言えることですが、売上を伸ばすために一番有効な行為は認知度を上げることです。
誰もがわかっていますが、無視していると言っても良いかもしれません。特に中小企業においては。
なぜなら「認知度を上げること=メディアに広告を出すこと=お金がかかること」であり、ハードルが非常に高い認識があるためです。
確かに世間一般的に、商品やサービスの認知度を上げようとするならば、そのコストは莫大にかかるでしょう。
たとえば、テレビCMで年間億単位のコストをかけている企業でも、そのキャッチコピーから企業が想起されることは、非常に難しいことなのです。
企業メッセージの認知率で、『「お、ねだん以上」ニトリ』が初の首位獲得|日経BPコンサルティング
ところが、今回のようにターゲット層がしっかりと決まっている場合、そのターゲットに話題性のあるコンテンツさえ提供できれば、勝手に広まり、認知度を上げてくれる可能性があります。
コンテンツマーケティングが重要な手法になる
現在、認知度と企業価値をあげるためのコンテンツマーケティングが非常に重要な手法になってきています。ネットを使ったコンテンツマーケティング手法のことをオウンドメディアと呼びます。
従来、認知度を上げるということは、常時チラシを巻き続ける、新聞広告を出し続ける、テレビCMを活用する、など非常にお金がかかるものでした。
しかも一度やり始めてしまうと、怖くてやめられないというおまけ付きです。
ライフネット生命は、市場調査を利用することで、非常に効果的、かつ安価で認知度を上げるためのコンテンツをつくることができました。
市場調査を行いつつ、プロモーションにもつなげるこのやり方、みなさんも参考にされてみてはいかがでしょうか。
ところで、ドラゴンボールの世界ではミスターサタンを除き、すべての人が1度死んでしまっているんですけど…保険会社大変ですね。