アスクルはなぜ急激に成長したのか?独自の代理店システムを考察

アスクルとは

アスクルの成り立ち

BtoB業態のためか、通常の通販ビジネスとは違うイメージを持つ「アスクル」ですが、れっきとした通販ビジネス事業者です。

アスクルは、事務用品のプラス株式会社の子会社として設立され、当初は小売を通さない事務用品の直販の役割を担っていました。

通販ビジネスを本格スタートさせたのは1993年からで、翌年1994年には利用登録が5万オフィス、さら翌年の1995年には10万オフィス突破と急激に拡大しています。

2001年に155万オフィス突破という記述はありましたが、これ以降も増えているのでしょう。早々とオフィス通販市場を確立していましました。

現在では、「たのめーる(大塚商会)」、「カウネット(コクヨ)」というライバル、他にも複数社が競合する市場になっていますが、当初はアスクルの独壇場でした。

2012年「アスクル」「たのめーる」「カウネット」売上比較

では、なぜアスクルは急激なスピードで業務を拡大し、現在の地位を確保できたのでしょうか。

エージェントシステムというアスクルの代理店制度

アスクルは大規模な物流センターを構えている他、「エージェントシステム」という独自の代理店システムがあり、それが急激な拡大の要因の一つになっています。

一番の特徴は、代理店である「アスクルエージェント」が街の文房具店であることです(現在ではそれ以外の業者も多数参入しています)。

アスクルエージェントの主な仕事は、大きく分けて「顧客の開拓」と「代金の回収」で、それ以外の業務、たとえばオペレーションなどの問い合わせ対応はアスクルが行います。

アスクルエージェントの仕事1.顧客の開拓

まず顧客の開拓ですが、アスクルエージェントはほとんど顧客開拓を行う必要がありません。

前提として町の文具店なので、ある程度企業や学校などの顧客は持っています。そこを直接開拓する程度でしょう。もちろん、がんばって直接営業をしているアスクルエージェントも存在します。

通常は、チラシや新聞広告などのマーケティングをアスクル側で行い、獲得した顧客は地域に応じて、担当のアスクルエージェントに振り分けます。

手数料は売上の15%程だそうです。これはちょっとおいしい感じがします。

アスクルエージェントの仕事2.代金の回収

アスクルエージェントのもう一つの仕事は、販売代金の回収です。アスクルの注文は商品を先に送り、代金の回収は月末の一括請求となっています(法人の場合)。

つまり、売上高はそのままエージェントの売掛になります。アスクルエージェントは、代金回収をしてアスクルに納めることで、手数料を得られます。

アスクルエージェントが負うリスク

「10年前にアスクルエージェントになっておけば良かったー。」と思う人もいると思いますが、アスクルエージェントにもリスクはあります。

アスクルエージェントが負うリスク1.顧客の開拓

まず、チラシや新聞広告などの販促費は、アスクルエージェント持ちです。「ドカンと広告やったるわい、スケールメリット出るから自分らでやるよりええやろ?」と言った感じ。

あとは顧客獲得後のカタログ費用もアスクルエージェント持ちになります。これらの費用によって、15%程の手数料は10%未満になるようです。

アスクルエージェントが負うリスク2.代金の回収

次に、販売代金の回収です。顧客からの売上が大きいほど売掛債権は大きくなるため、アスクルエージェントは代金回収リスクを負うことになります。

また、顧客の多くがコピー用紙を発注しますが、それだけの顧客も少なくないようです。

仮にコピー用紙だけを発注されてしまうと、月に一回コピー用紙のためだけに代金回収をすることになり、手間がかかります。

利益が出ないどころか、時間をかけただけ機械損失になってしまうかもしれません。

アスクルとアスクルエージェントの次の相手

相応のリスクがあるとは言え、アスクルの名前で企業のオフィスにすんなり入っていけることは、大きなメリットだと思います。

時間をかけてでも代理店業をスケールさせることができれば、先行者メリットだけで商売が成立しているアスクルエージェントも多いのではないでしょうか。

このように、アスクルは代理店を支え、代理店はアスクルのリスクを引き受けることで成長してきました。

ただし、今アスクルのライバルは、「たのめーる」「カウネット」だけではなく、Amazonやその他のECサイトです。

アスクルの名前の由来になった「今日頼めば、明日来る」は、通販業では当たり前になってしまいましたし、ECサイトが当たり前になったため、価格競争で優位に立っているわけでもありません。

アスクルは個人通販も手掛けるようになりましたが、今後もカタログ形式を保持していくのか、次の一手をどうしていくのか今後に注目です。

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