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アパレルECサイトにおける消費者の変化とは
郊外型アウトレットモール、海外カジュアル衣料ブランドが続々と出店する中、2000年代に入り、EC市場の拡大に伴って縮小傾向にあるのが、デパートなどの商業施設です。
これまでは商業施設をメインに出店していたアパレルブランドも、今後はよりECサイトを中心にした販売スタイルへのシフトとが求められています。
なぜなら、わたしたち消費者は何でもネットで買い物をするからです。
サイズの関係で以前は敬遠されていた洋服も、スマホから購入するのが当たり前になりましたね。
では、消費者の購買欲求や購買行動はどのように変化したのでしょうか。
今回はECサイトを利用する消費者の購買欲求や購買行動がどのように変化したかに焦点をあてたお話をしたいと思います。
消費者はアパレルECサイトの変化に対応できている
アパレル業界のECサイトプラットフォームが、パソコン→携帯電話→スマートフォン→タブレットへと激しい変化への対応に迫られていることに対して、私たちは消費者はその変化に簡単に対応できているように思います。
参照:ニールセン株式会社「スマートフォン・メディア利用実態調査」(2013/09/5)
対象:スマートフォンを保有/インターネットを利用する日本全国の13歳~69歳の男女(有効回答3,077件)このグラフからわかることは以下の通りです。
スマートフォンユーザーのうち、49%の人がスマートフォンを利用して商品を購入した経験があり、さらに20代、30代の女性の割合が高く、特に20代女性は65%の人がスマートフォンでの購入経験がある。
特筆すべきは、50-60代のスマホユーザーの30-40%弱の方がスマホで決済しているという事実です。
上記は2013年9月のものですが、高齢者層でも高い割合でスマホ決済を行っている事がわかります。
洋服(ファッション)の購買行動の変化
近年、アパレル業界の市場動向は堅調に推移しています。ただし、今後ECサイトの売上が拡大しても、店舗売上が伸びていくことはないでしょう。理由は消費者の購買欲求と購買行動の変化にあります。
以前の購買行動
インターネットが普及していなかった時代は、洋服が欲しいと思った場合、時間を作ってお店まで行くしかありませんでした。
都市部在住者は店舗や商品までの距離が近いため、比較的弱い購買欲求だったとしても、簡単に店舗に行き、購買行動を起こすことができました。
おそらく今でも、直接店頭で商品を手に取って、試着して洋服を買うニーズは高いと思います。
対して地方在住者は、洋服を欲しいと思った時点で、情報を仕入れるアクションが必要になります。遠くの店舗に行くためには動機付けが必要です。そのためには、まず書店に行き、ファッション雑誌を見ることで強い購買欲求が生まれ、そこでようやく購買行動につながります。
現在の購買行動
現在、どこに住んでいたとしても、洋服が欲しいと思ったらすぐにインターネットで情報を仕入れられます。さらに、気に入ればすぐに購入できる仕組みを完備しています。
店舗にしてみれば、以前よりも、洋服を欲しいと思った消費者を顧客に変えることが簡単になりました。衝動買いを促しやすくなりました。
購買行動の変化による影響
気になる洋服の情報を簡単に仕入れ、すぐに商品を手に入れられるという購買行動の変化は、アパレルECサイトの発展につながっていきました。
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書店に行く
↓
雑誌で情報を仕入れる
↓
時間を作ってお店に行く
↓
買い物をする
↓
その場でインターネットから情報を仕入れる
↓
そのまま買い物をする
消費者の一番の変化は時間です。商品に接触するまでの時間が圧倒的に短くなったため、購買欲求が生まれてから、それを満たすまでの時間も短くなりました。
そして、情報量です。欲しい商品の情報は詳しく調査するようになり、意識する関連情報も増えました。たとえば、5年前に比べて自分の洋服サイズを細かく把握するようになった人は多いはずです。
情報入手とECサイトのつなぎ込み
消費者は、インターネットによって自身の欲求をすぐに満たせる環境を手に入れました。
そこで、各社アパレルブランドや関連業者が次に行う仕掛けは、いかに消費者にとって一番の情報提供先になるかです。
洋服を選ぶ際に気をつけることの1つとして、コーディネートがあります。これまで消費者は、雑誌のコーディネートを見てイメージを膨らませることで購買行動に繋げていました。
これをインターネット上で行うのが、コーディネートアプリ・サービスです。iQON、コーデスナップ、WEARなどのコーディネートアプリは、以下の理由で人気があります。
アプリ上では、誰でも憧れの「読者モデル」になることができます。商品を購入する前にアプリでコーディネートするという行為は、女の子なら子供の頃誰もが好きだった着せ替え人形に似た楽しさを持っているはずです。
購買行動のスタートとして「洋服が欲しい」がありますが、コーディネートアプリを利用するユーザーを集めることによって、「洋服が欲しい」までにかかる時間さえも短縮できる可能性があります。
たとえばソーシャルゲームを「ゲームセンター」や「据置型ゲーム機」で行うゲームと比べる感覚に似ているかもしれません。ソーシャルゲームが日常の一部になってしまっている人にとって、ゲームは特別なものではありません。
「洋服が欲しい」という意識が、以前に比べて特別なものではなくなれば、購買行動の時間短縮が可能になります。
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洋服が欲しい
↓
その場でインターネットから情報を仕入れる
↓
そのまま買い物をする
↓
その場でインターネットから情報を仕入れる
↓
そのまま買い物をする
情報プラットフォーム事業が発展していく
アパレル業界に限らず、インターネットの発展によって購買プラットフォームが変わってしまった業種はたくさんあります。
今後は、いかに情報を与えて、購買行動までをスムーズに行うか、ユーザーに対していかに日常と購買欲求を同化させるか、ということが重要になってくるはずです。
そのため、購買プラットフォームに誘導するための情報プラットフォーム事業が大きく発展していくのではないかと思います。
もちろん、わたしたち消費者は便利になった恩恵を受けられるわけですが、同時に大量の情報を処理し、ノイズを除去した上で、本当に欲しい物を見極めて買い物をする能力を養っていかなければいけないでしょう。