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Facebookが集めるユーザーの感情情報
Facebookが目指すのは、オンライン上でのリアルな社会インフラです。
つまり、私たちが普段生活をしている場所が、そっくりそのままオンライン上で展開される未来をつくろうとしています。
けっしてバーチャルな社会をつくろうとしているわけではありません。
Facebook行うリアルな交流を目指す施策
・実名制を推奨している(半ば強制)
・セキュリティ設定により、誰と交流できるか細かい設定ができる
このような施策や機能の一端を見ても、それがわかるはずです。
リアルな社会生活では、私たちは余程のことがない限り、感情を隠して生きています。
多かれ少なかれ、本音と建前は人種によらず必ずあるものでしょう。
もちろん、接触する人が普段どのような感情を抱いていて、ポジティブな人なのかネガティブな人なのかというのは、ある程度関係性が築けていれば、なんとなくわかります。
ただ、それを可視化するのは不可能です。
Facebookは、Facebook内のリアルな交流をつくるために、リアルな社会生活と同様の感情表現が重要だと考えているはずです。
もちろん、Facebookとしての世界観をつくるためですが、それ以外にも理由があるのでしょう。
そこで、Facebookが感情を可視化するための戦略、それによって何が行われるのかを見ていきます。
Sympathize(そうだね)ボタン
本当に実装されるかはわかりませんが、Facebookが「Like!(いいね!)」とは別に「Sympathize(同情)」ボタンを開発しているという話が出たのが、2013年12月です。
Like!は共感を表します。同様にSympathizeも共感ですが、日本語だと同じ意味になってしまうため、同情と捉えた方が良いでしょう。
「いいね!」にならうとすれば「そうだね」でしょうか。「そうだね!」ではありません。
このボタンが実装されると、Facebookでの感情表現が大きく変わることになります。
Facebookでのポジティブな感情表現
・サッカーの試合に勝った! → いいね!
・恋人ができた! → いいね!
・売上げ目標達成した! → いいね!
これまでは良い出来事に対して、どちらかと言うとポジティブな発言に対して、いいね!が使われました。
ところが、いいね!という1ボタンでは表現できない内容があることは、Facebookを使っている人ならわかるでしょう。
Facebookで(ネガティブな意味を含んだ)同情する感情表現
・会社クビになった… → そうだね(同情するよ)
・彼女にフラレてしまった… → そうだね(同情するよ)
・事故で入院しちゃった… → そうだね(同情するよ)
上記の例で、いいね!は押しにくいと思いますが、そうだねボタンなら押しやすいはずです。
共感と同情の違い
「Like!(いいね!)」を共感、「Sympathize(同情)」を同情と言いましたが、共感と同情の違いは何でしょうか。
共感とは
共感とは相手の身になって、あたかも相手が感じるように自分も感じようとする行為。共感は感情移入と訳されることも多い。
同情とは
同情とは自分の過去の体験や価値観から、相手の思考や感情を推測する行為。他人の感情、特に苦悩・不幸などを自分の観点からわかろうとする。
以上のように、文字に起こすと難しいですが、共感しやすい感情はポジティブな感情で、同情しやすい感情はネガティブな感情ということになります。
Facebookにおける「いいね!」と「そうだね」の使われ方
ネガティブな感情を表すSympathize(そうだね)をもう少し日本語で言い表すと、
・あぁ…
・そっか…
・ふーん
・なるほど
とかなり表現が多くなってしまいますが、以下のように捉えるとわかりやすいかもしれません。
いいね!とそうだねの使い分け
いいね! → 関心がないよりは、ポジティブな意味
そうだね → 関心がないよりは、ネガティブな意味
「そうだね」が実装されると何が起きるのか
「そうだね」が実装されることにより、ポジティブな感情に共感する「いいね!」とネガティブな感情に同情する「そうだね」という感情情報を集めることができます。
これはどういうことを表しているのでしょうか。
「そうだね」の実装により何が起きるか
1.これまで控えられていた同情を誘う投稿が増える
↓
2.よりリアルに近い社会をSNS上に築くことができる
↓
3.「いいね!」と「そうだね」の情報を集約することで感情の可視化が行える
では、具体的に説明していきましょう。
1.これまで控えられていた同情を誘う投稿が増える
これまでは、いいね!が付きやすいポジティブな投稿が好まれていたはずです。
1ボタンで同情を表現できるようになると、恐らくネガティブな同情を誘う投稿が増えることになるでしょう。
2.よりリアルに近い社会をSNS上に築くことができる
一般的な会話で多いのは同調です。会話の中で相槌を打つ行為は、共感と同情で表現できます。
同調の反対語である反論がリアルな社会で行われる場合は、必ず+アルファの言葉が含まれます。
つまり、
・同調は、「いいね!」と「そうだね」で表現できる
・反論はコメントに書き込まれることで表現できる
ということになります。これはリアルな社会の会話に近い形であると考えます。
3.「いいね!」と「そうだね」の情報を集約することで感情の可視化が行える
Facebook上で感情情報を集約できれば、その情報は可視化することができます。
Facebookがリアルに近い社会になると仮定するならば、リアルな社会の感情情報が近似値で可視化できるということになります。
Facebookが行った感情実験
では、この感情情報が可視化されることによってFacebookは何が行えるようになるのでしょうか。
2014年7月、Facebookの感情実験がニュースになりました。
それは、約70万のFacebookユーザーを対象に、その投稿内容によってユーザーの感情やFacebookの使われ方がどのように変化するかを調べるというもので、秘密裏に行われた実験でした。
彼らのニュースフィードを細工し、積極的な内容に偏った投稿と、悲観的な内容に偏った投稿をそれぞれ見せ、利用者の感情の変化を調べた。実験の事実は利用者には知らせなかった。
その結果、ニュースフィードに積極的な投稿が増えれば利用者の投稿にも積極的なものが増え、悲観的な投稿が増えるとやはり利用者の投稿にも悲観的な内容が目立ったという。
そうした実験結果を踏まえ、研究者側は「人の感情は、自分が気付かぬうちに他人の感情を経験することによって伝染する」と説明。「FB上では他人の感情が自分の感情に影響を与えることが証明され、SNSでは感情が大規模に伝染することが今回の調査で判明した」と結論付けた。
参照:
産経ニュース「“秘密実験”利用者の感情操作 FBが投稿内容細工 68万9000人対象」
実験結果としては、ニュースフィードにポジティブな投稿が増えれば、ユーザーの投稿にもポジティブなものが増え、ネガティブな投稿が増えるとネガティブな投稿が増える、というものでした。
秘密裏の実験ということで、各所からかなりの批判があったようです、Facebookにとっては予想通りの結果が出て満足だったでしょう。
この実験結果から、Facebookはユーザーの感情コントロールが可能だ、ということがわかったのです。
Facebookをビジネスと捉えている人へ
Facebookが行った今回の実験は、単純にFacebook上の感情をコントロールする実験でした。
現在の状態であっても、Facebookはユーザーをポジティブ、ネガティブに誘導することが可能です。
さらに、Facebookとリアルな社会の感情が近くなると、Facebook上での感情コントロール=リアルな社会の感情コントロールという図式が成り立つ可能性があります。
しかも、感情情報の可視化により、リアルな社会が今どのような感情傾向にあるのか、が分かりますし、感情の数値化で経済動向などがわかるようになる、かもしれません。
もちろん、実験の際に大きな批判が出た通り、感情をコントロールされる可能性に怖さを感じる人も多くいるでしょう。
リアル社会の感情コントロールまで波及するかはわかりませんが、逆にそういったプラットフォームだということを認識して使う人は、使い方によっては恩恵を受けられる可能性があります。
これまでのFacebookにおける情報の伝播・拡散はポジティブな共感が中心でした。
ところが、ネガティブな同情が伝播・拡散できるようになると、これまでできなかった違った情報拡散、誘導手法ができることになります。
リスクを煽る、ネガティブ情報で商売を行う人たちは、いくらでもいます。
もちろん、使い所と良し悪しの話はありますが、Facebookをビジネスプラットフォームの1つとして捉えている方にとっては、押さえておきたい話です。
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